第6章176話:父の訪問

私は告げる。


「まあ、父上が早々に決着をつけてくれることを、祈るしかありませんわ」


私の父ルーガが、今回の戦争の総指揮官である。


数々の戦争を制した実績のある父上なら、すぐに戦争を終わらせてくれるに違いない。


……と。


思っていた、そのとき。


トントン。


部屋の扉を叩く音がした。


やってきたのは執事である。


「ルチル様。ルーガ様がお見えです」


「……父上が?」


「はい。こちらへお通ししてもよろしいでしょうか」


「え、ええ……」


と、私は許可する。


ややあって、父上がリビングへとやってきた。


公爵邸にいるときとは違って、父上は、将軍が着用する立派な軍服に身を包んでいる。


エドゥアルトやフランカは席を立ち、アリアの横に並ぶ。


「久しぶりだな、ルチル。他の者たちも、ごきげんよう」


と、全員に挨拶をした。


エドゥアルトやフランカ、アリアたちは静かに目礼する。


父上が椅子に着席する。


私は姿勢を正しつつ、尋ねた。


「お久しぶりです、父上。……本日は、どのようなご用件で?」


父が意味もなく、この屋敷を訪れることはない。


ましてや、このタイミング。


おそらく戦争に関わる話だろう。


父上は真剣な声音で言った。


「ああ、ジルフィンド公国との戦争に関してだ。単刀直入に言おう。ルチル、お前も此度こたびの戦争に参加せよ」


「ええ!?」


と、私は驚きの声をあげる。


父上は告げる。


「お前の開発した武器、魔法銃まほうじゅうの威力は、私の知るところでもある」


ルチル隊でのみ配備している新型武器――――魔法銃。


実はその実践テストを、父上の前でおこなったことがあった。


だから父上は、魔法銃の性能やポテンシャルについて、よく理解していた。


「ゆえにルチル隊を、戦争に参戦させることに決めた。此度の相手であるジルフィンド公国軍は、精強であり、一筋縄ひとすじなわではいかない。お前の傘下にいる【魔法銃撃隊まほうじゅうげきたい】の力が必要である」


「な、なるほど」


と、私は納得する。


魔法銃の力を借りたいわけか。


実戦投入じっせんとうにゅうはもっと先になるかと思っていたが、意外と早かったな。

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