第6章175話:王都の雰囲気

ジルフィンド公国の侵略。


それはクランネル王国全土を震撼させることになった。


王都も、戦争に関する話題で持ちきりである。




「まさか公国が侵略してくるとは」


「ジルフィンド公国ってどこだ?」


「北東にある国だよ」


「冬明けに嫌なことが起こったわね」


「ジルフィンド公国は何考えているんだ」


「王国軍は、負けたりしないよね?」


「税金も上がったし、物騒な世の中になりそうだ」





戦争に際して、女王は非常事態宣言を発令した。


これにより国は、国民へ、法律に書かれていないルールを適用することも可能となる。


ならびに、戦時における取り決めをまとめた【戦時条項せんじじょうこう】と呼ばれる法を発布。


その条項の中に、戦時中は税率を20%引き上げる、というものがあった。


もちろん、国民にはすこぶる不評である。


しかし、そうはいっても戦争に負けては困る。


よって不満はあるものの、国民たちは国の政策に一定の理解を示していた。







昼。


王都の屋敷にて。


私は2階のリビングで、エドゥアルト、フランカ、アリアの4人で、話をしていた。


もちろん内容は、ジルフィンドの侵攻についてである。


「まさか侵攻してくるなんて……ジルフィンド公国は、何を考えているのでしょうか?」


と、フランカは疑問を口にした。


私が答える。


「ジルフィンド公国の現大公げんたいこう、オーギュストは、侵略思想の持ち主なのですわ。数年前にオーギュストが新大公に就任してから、ジルフィンド公国は、侵略国家としての体制を強めていましたし」


私の言葉を継ぐように、アリアが続きを説明する。


「オーギュストは、自身の侵略思想に賛成しない者を片っ端から粛清したり、軍制改革をおこなって軍事力を強化したり……明らかに戦争の準備を整えている動きでしたね」


エドゥアルトが尋ねる。


「それで、今年にようやく戦争準備を終えて、いよいよ我が国への侵攻を開始したわけですか」


「その通りですわ。はた迷惑な話ですわよね」


と、私は肩をすくめた。


フランカが言う。


「公国軍は精強と聞きますから、怖いですね。最近は、王都の空気も悪いです」


「まあ、税金が上がりましたからね」


と、私は合いの手をうつ。


アリアがため息交じりに言った。


「増税のせいで、商売人もやりくりが難しくなりました。早々に事業が立ちゆかなくなった商会もあるほどです。ルチル商会は、幸い、いまのところ無事ですが」


「さっさと戦争を終わらせないと、国民感情もどんどん悪化していくでしょうね」


と、私は言った。


たとえば地球の歴史には30年以上も続いた戦争もある。


ダラダラと戦争が続くと、国の経済が悪化する。


そうなれば国民の不満も高まり、暴動が起こったり、混乱を極めるだろう。

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