第5章172話:会議3

さっそく会議を始める。


アリアが司会として会議を進める。


主に、今後の商会の販売戦略について語る会議だ。


それぞれ意見を出し、アリアがまとめる。


私はその会議を見守るだけである。






――――2時間ほど時間が経った。


ある程度、販売戦略の概要が固まってきた。


そのときアリアが言ってくる。


「ルチル様」


「はい?」


「ルチル様から、何かお言葉やご意見はありませんか?」


全員の視線が、私に集中した。


私は告げる。


「そうですわね。販売戦略に関する話については、何も」


「さようですか」


「しかし、別の提案ならございますわ」


「それはなんでしょう!?」


とユメラダさんがいきなり立ち上がり、興奮したように身を乗り出した。


しかし我に返って、座る。


「……失礼しました。つい」


ユメラダさんが謝罪した。


アリアが小声で言ってくる。


「みなさん、ルチル様のファンですから、ルチル様の提案やアイディアに強く期待されておられます」


「そ、そうなんですの」


だからユメラダさんが取り乱したように立ち上がったのか。


その期待に応えられるといいのだけど。


まあ、とりあえず提案を始めよう。


「私が提案したいのは、ルチル商会という組織の改革ですわ」


「組織の改革、ですか」


とアランさんが相槌を打つ。


私はうなずいてから、立ち上がる。


私はアイテムバッグから掲示板と大きな紙を取り出した。


掲示板をみんなが見えやすい位置に立てて、そこに紙を貼り付ける。


この紙には、ルチル商会の新しい組織図そしきずが描かれている。


「現在、ルチル商会では、誰が何を担当するか、ざっくりとしか決めておりませんわね。それをハッキリさせたいと思いまして、このような組織図をご用意いたしました」


私は、掲示板に貼り付けた組織図を示唆しさした。


「読み上げていきますわね」


営業部門。


会計部門。


生産部門。


法律部門。


販売部門。


広報部門。


人事部門。


戦闘部門。


総務部門。


「まず以上9つの部門に分けますわ。ルチル商会の従業員は、みな、どこかの部門に所属するようにします」


さらに私は説明する。


「そして各部門かくぶもんには、リーダーとなる部門長ぶもんちょうを置きます。さらに部門長の上には、あなたがた最高幹部がいる、という形になります」


そう。


これは前世の会社組織と同じ構造だ。


営業部は営業部長がまとめる、といった形。


それを異世界の商会経営にも導入しよう、というのが私の提案である。


なお次長や課長などのポストを用意するかどうかは未定だ。


そういう細かいことは、ゆくゆく決めていけばいいと思っている。


「営業が得意なら営業を、販売が得意なら販売を……と、己の得意な分野に特化したほうが、従業員のやる気も高まりますし、スキルも磨かれます。幹部の側でも、部下の管理がラクになるでしょう」


私は続ける。


「この組織図の形態で運用していけば、業務が効率化され、より安定性の高い商会経営が実現すると思いますわ」


そう締めくくった。


フランチェスカさんは言った。


「素晴らしいです! 各々おのおのの役割がとてもわかりやすいですわ!」


「確かに、これは画期的ですね」


とアランさんも同調した。


ザルブレヒトさんが告げる。


「なるほど。職能しょくのう別に部署を分ける……ということですか」


「ありそうで無かった発想ですね!」


とユメラダさんも同調する。


異世界の商会経営は、思ったより雑であることが多い。


大商会だいしょうかいでも、保有している店が2つか3つ程度だったりするので、ふわふわした運営でも上手くいってしまうことが多いからだ。


しかし店舗の数が10を越え、従業員数も300人を越えているルチル商会では、そういう雑な組織運営はもう厳しい。


大規模な経営に耐えられる組織づくりをしていかなければならないだろう。






―――――――――――――――――――

おしらせ:

新作を投稿しました! 女主人公の異世界ファンタジー小説です。

本作とあわせて、是非お読みいただけると幸いです!


【異世界に転生すると、私のチートスキルは『チョコレート魔法』でした!】

https://kakuyomu.jp/works/16818023212608563260





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る