第5章171話:会議2

「では次、フランチェスカさん」


「はい!」


と1人の女性が返事をする。


フランチェスカ。


125歳。


髪は赤髪。


ゴージャスな縦ロールの髪だ。


瞳は黄色。


ドレス姿である。


めちゃくちゃお嬢様っぽい感じである。


「お初にお目にかかります、ルチル様! 私はフランチェスカ・レティーグラスと申しますわ!」


「ん……レティーグラス? どこかで聞いた名前ですわね」


と私は記憶に引っかかりを覚えた。


フランチェスカさんが告げる。


「お恥ずかしい話なのですが、私はレティーグラス元・侯爵家の娘でございます」


「ああ! レティーグラス家ね、はいはい」


と私は思い出した。


レティーグラス家とは、かつて侯爵として辣腕らつわんを振るった貴族である。


しかし汚職に手を染めたことで、何年か前にお取り潰しとなり、没落してしまったのだ。


つまりフランチェスカさんは没落貴族の娘。


フランチェスカさんは言う。


「私は平民の身として落ちぶれていたところを、アリア様に拾っていただきました。その節は、本当に感謝しております」


「いえ……フランチェスカさんの政治や法律に関する知識は、とても役立っています」


「そう言っていただけて光栄ですわ! 元貴族として学んできたことは、無駄ではなかったと思うことができます。ルチル様、アリア様、そして皆様も、今後ともよろしくお願いします!」


フランチェスカさんが一礼をして、締めくくった。


アリアが言う。


「では最後に、ザルブレヒトさん」


「はっ」


一人の男性が返事をして立ち上がる。


ザルブレヒト。


201歳。


深い緑色の髪をオールバックにまとめあげている。


瞳は赤色。


豊かなヒゲをたくわえたオジサンだ。


軍服のような服装。


鍛え上げられた筋肉の盛り上がりが、服の上からでもわかる。


「ザルブレヒトです。商会においては武力関係のまとめ役をしております」


金銭や商品を保管している倉庫などは、常に、盗賊どもの襲撃対象。


だから商売では、自衛のための武力を保有することは珍しくない。


とくに大きい商会では、ちょっとした軍隊というべき規模の兵力を抱えていることがある。


ルチル商会では、ザルブレヒトさんが、武力のまとめ役になってくれているようだ。


「ワシは退役軍人です。軍を辞めてから細々ほそぼそ暮らしていたのですが、貯蓄が底を尽きてきてしまいまして……仕事先を探していたところ、アリア様に誘われました」


そうザルブレヒトさんは自己紹介をした。


アリアが補足する。


「ちなみに、ザルブレヒトさんは商家しょうかの出身です。いわゆる酒保商人しゅほしょうにんの家系ですね」


酒保商人とは、軍に付き添って商売をする商人のことだ。


軍隊が行軍中などに必要とする水や食料、武器や道具などを販売して稼ぐ商売である。


ザルブレヒトさんは言った。


「恥ずかしながら、ワシの実家も没落しております。現在は、どちらかといえば軍家としての色合いが強いです」


ザルブレヒトさんが説明するところによると……


たしかに昔は酒保商人として稼いでいたが、あるとき商売に失敗して破産。


以後、ザルブレヒトさんは軍に入り、活躍。


最終的には中隊長の座まで上り詰めたんだとか。


(没落したとはいえ酒保商人だった経験があるなら、ザルブレヒトさんは、軍や軍需産業に明るいということだね)


と私はインプットした。





かくして自己紹介が終了する。




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