第5章166話:レオン視点3

<レオン視点・続き>


どうやらかなり繁盛しているようだ。


「いらっしゃいませ。1名様ですか?」


「ああ」


と、レオンは短く答える。


「ではカウンター席へどうぞ!」


一番端のカウンター席に案内される。


店員がメニューを持ってきた。


「メニューはお読みできますでしょうか? 読めない場合は、店員がメニューを読み上げさせていただきますが」


「大丈夫だ。読める」


「さようですか。では、お決まりになりましたらお声がけください!」


メニューを置いて店員が去っていった。


それをザッと眺める。


ずり、せせり、なんこつ……?


(さっぱりわからん。なんだこれは?)


文字が読めても意味がわからない。


ただ、下にビールと書かれており、イラストがついていた。


なるほどビールとは、お酒のことらしい。


1杯700ディリンと書いてある。


とりあえず、このビールとやらを頼んでみよう。


「注文いいか?」


呼びかける。


「はい」


「ビールってやつを一つ」


「かしこまりました」


「あと、なんこつとかずりとか、よくわからないんだが……要は焼き鳥なんだよな?」


「ええと、なんこつやずりというのは鳥の部位の名称ですね」


「そうか。どれが美味いのかわからんから、とりあえず1本ずつ持ってきてくれ」


「お一つの注文で2本になるのですが、よろしいですか?」


どうやら焼き鳥1つ=2本という扱いらしい。


「ああ」


「かしこまりました。では焼き鳥串が全てお一つずつ、ビールを1杯ですね」


女性店員が去っていった。


レオンは隣の席の男を見る。


その手元には酒が握られている。


黄金の酒だ。


これがビールか?


……と、思っていると。


同じ酒が店員から運ばれてくる。


どうやら焼き鳥よりビールだけ先に持って来てくれる仕様のようだ。


(黄金色の酒……これがビール)


エールとは違う。


ずいぶんと綺麗だ。こんな色合いの酒が見たことがない。


しかも……かなり冷えている?


氷魔法使いを雇っているのか?


(とりあえず飲んでみるか)


グラスの取っ手をつかんで、レオンはビールを口に運ぶ。


そして。


「……!!?」


う、


うめえ……!!


マジで美味すぎる。


こんな酒は飲んだことがない。


ちょっと待てよ。


これが700ディリンだと?


7000ディリンの間違いじゃないのか?


慌ててメニューを確認する。


やはり700ディリンだ。


……嘘だろ。


そのへんで売ってるエールなんかと段違いじゃないか。


(さっき店の前で食べた焼き鳥も、マジで美味かった……ここってもしかして)


めちゃくちゃ当たりの店なんじゃないか?


そう思って、俄然がぜん、期待が湧いてきた。


もう一度、ビールをかっくらう。


二度、三度と飲んでいるうちに、空っぽになってしまった。


再度、ビールを注文する。


そして、新しいビールとともに、最初の焼き鳥がやってきた。






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