第5章162話:兵隊4
しばらくして。
銃撃訓練が終了する。
魔法銃を回収した。
30分の休憩を挟む。
その休憩時間のあいだに、私は、最後の訓練となる
ちょっとコツのいる訓練なので、ホーヴァン補佐官に、実際におこなってもらう。
――――30分後。
全員が整列する。
「それでは、残る時間は、体力トレーニングをおこないますわ」
と、私は宣言した。
「はっきり申し上げると、これが1日の中で一番きつい訓練ですわ。メンタルの強化も兼ねているので、死ぬ物狂いで付いてきなさい」
一番きつい訓練と聞いて、兵士たちが、緊張した面持ちとなる。
訓練メニューを告げる。
「これからみなさんにおこなっていただくのは【アスレチック訓練】ですわ。あちらにさまざまなアスレチック道具を用意いたしました。あのアスレチック・コースを走破していただくのが、アスレチック訓練です」
私は説明する。
「もう少し具体的に、アスレチックとはどのようなものなのか、実践するところを見てもらったほうがわかりやすいと思いますので……ついてきなさい」
と、私は言ってから歩き出す。
訓練場のグラウンドには、アスレチック道具をすでに配置してある。
私は一番近いアスレチック道具の近くにやってきた。
最初はハードルである。
「こちらはハードルと呼ばれる道具ですわ。10個並べましたので、全て、ほふく前進でくぐっていただきます。ホーヴァン補佐官」
「はっ」
「実践していただいてもよろしいでしょうか?」
「了解です」
と、ホーヴァンさんが返事をする。
兵士たちが見守る中、ホーヴァンさんがハードルをほふく前進でくぐる。
前世で存在した、陸上競技に使われるハードルとは、少しだけ形状が違う。
私が作ったハードルは、2本の柱の上部にバーを取りつけているだけのものだ。
この2本の柱を地面に突き刺したうえで、足元に
結構がちがちに固定されているので、ほふく前進の途中でハードルにぶつかったりしても、ハードルが倒れたり動いたりしない。
なお、ハードルの高さは、這いつくばらないと
たとえば腕立て伏せよりも高い姿勢で潜ろうとすると、おそらく頭をバーにぶつけてしまうだろう。
私は言った。
「この訓練を【ハードルくぐり】と呼んでおきましょう。10個全てくぐったら、立ち上がって構いませんわ」
ハードルくぐりは、見た目よりもキツイ訓練である。
まあ、ほふく前進ってしんどいからね。
「では、次」
私は次のアスレチックへ移動する。
お次は、ボルダリングである。
「こちらは、クライミングウォールといいます。壁にくっついた石をつかみながら頂上にのぼって、向こう側に下りてください。ではホーヴァン補佐官」
「はっ!」
ホーヴァンさんが実践する。
彼はクライミングウォールを、ホールドをつかみながら昇っていく。
「なんとなくおわかりいただけるかと思いますが、これは崖を素手で昇ることを想定した訓練です。【ボルダリング訓練】と名付けておきましょう」
私が説明する。
兵士たちが感想をもらす。
「うわぁ……」
「なんだこの壁」
「すごくきつそうね……」
「これはヤダなぁ……」
と、口々に言っている。
さきほどのほふく前進に比べると、キツさが想像できたようだ。
私は言った。
「横幅が広い壁なので10人ずつ昇れるかと思います。前の人が昇り終えるまで、後ろの人は待機することになりますが、このとき空気椅子の姿勢で待機してください。ぼうっと突っ立って休憩することは認めません」
と、私は締めくくった。
「では次―――――」
そうして私は。
次々とアスレチックを紹介していく。
20メートルの
ロープ
重い荷物を運びながら移動。
トレーニングマットの上を前転・後転しながら移動。
コーンを避けながらジグザグに
縄跳びしながら移動。
100mハードル走。
1段150cmの階段を5段よじのぼる訓練。
……等々。
計20種類のアスレチック種目を紹介する。
「さて……このアスレチック・コースを、今から、休まず5周してもらいますわ。最後の1周だけは、身体強化魔法を使っていただきます。これが本日の最終訓練、アスレチック訓練の内容ですわ」
と、私は告げた。
兵士たちの反応はさまざまだ。
「5周か」
「きつい……か?」
「そこまでハードじゃないんじゃない?」
「いや、絶対きついだろ」
「意外にいけそうな気がする」
「いろいろあって面白そう」
全体としては、余裕だろうという声が多かった。
まあボルダリング訓練以外は、見た目のインパクトに欠けるからね。
でもね、ふふふ。
甘く見てると泣くことになるよ?
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