第5章:日々

第5章153話:コーヒー

―――第5章―――




平日。


昼。


晴れ。


大学のティールームにて。


私たちはいつものようにまったりと過ごしていた。


この日は、私が作ったコーヒーのお披露目を行った。


パンケーキなどの甘味には、コーヒーが合うと思ったからだ。


アイテムボックスに死蔵していたコーヒー豆たちを、ついに使うときがきた。


とりあえず、


無糖。


微糖。


カフェラテ。


カフェオレ。


の四つを用意し、コーヒーカップに入れて飲み比べてもらう。


ちなみに、どれもホットではなくアイスである。


まあ、いよいよ夏の陽射しが強まってきたからね。


マキは言った。


「私は微糖が一番好きですね」


一方、フランカは言う。


「私は無糖が一番好きかもです」


するとマキが言った。


「無糖は苦くありませんか? 何も入れないのはさすがにきついと思いますが」


「その苦味がクセになるんです」


と、フランカが答える。


まあ、好みは人それぞれだ。


エドゥアルトが言う。


「パンケーキのように甘いものを食べるときは、無糖の苦味のほうが相性がいいかもしれませんね。単体なら、私もマキ様のように、微糖が一番好きですね」


やはりといえばやはりかもしれないが、好評だったのは微糖である。


私はカフェラテが一番好きだ。


なのでミルクを混ぜて、ちまちまと飲んでいる。


マキが言った。


「それにしても、ルチル様は本当に、こういった物品をよく思いつかれますね。これもルチル商会で販売なされるのですか?」


「その予定ですわ。量産体制が整ったら、コーヒー専門の喫茶店を出してみようかと思っています」


「それは素晴らしいですね。私、いってみたいです!」


フランカが言ってきた。


私は微笑む。


「本当はパンケーキと一緒に出したかったのですが……一般販売を禁止されてしまいましたからね」


女王との取り決めで、パンケーキは非売品となり、特別な行事のとき以外に出すことはできない。


そのとき、エドゥアルトが別の話題を切り出してきた。


「そういえば、お茶会への参加希望者が殺到していると聞きましたが」


私はうなずいた。


まだ私は、お茶会を仲間内でしか開いていない。


身内以外には、お茶会を開くとも、参加者を募るとも言っていないのだ。


なのに、お茶会の参加が殺到している。


その理由をフランカが口にする。


「パンケーキの噂を聞きつけたからですよね」


――――パンケーキの噂。


それはここ数ヶ月、大学の貴族たちを席巻している噂のことだ。


パンケーキが王国最高の菓子と認定されたことは、王都在住の貴族にはもはや常識となりつつある。


そのパンケーキを私が作ったこともだ。


そしてそのうえで、どうも、私の開くお茶会でパンケーキが提供されるという噂が流れているらしく。


一度でいいから、このティールームに招待されたいと思うご令息・ご令嬢たちが激増しているのだ。


ただ……そういう学生たちは私のもとへ参加を希望しにこない。


公爵令嬢である私に直接話しかけることはためらわれるからだ。


だから、取り巻きであるマキやフランカのもとに参加希望者が殺到している。

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