第4章152話:運命
私はティールームを出て、ルビーロッドと一緒に、個室棟を出る。
個室棟そばに一本の樹木が立っているのだが、その木の下で立ち止まった。
「で、話したいこととは?」
と、私が尋ねると、ルビーロッドが言った。
「おぬしとゼリスの決闘についてじゃ。実は、わらわも、先日の決闘については観戦しておった」
「ふうん? それで?」
「……おぬし、実のところ、アレックス王子のことをどう思っておるのじゃ?」
ルビーロッドは茶化すような空気ではなく、真剣な顔で聞いてくる。
私は肩をすくめて答える。
「私がアレックスのことをどう思っているのか知って、どうするつもりですの?」
「いや、実は……昨日の夕方ごろ、殿下がわらわのもとに来てな」
「は?」
アレックスがルビーロッドのもとに?
なぜ?
と、私は首をかしげる。
ルビーロッドは語った。
「こちら側につけ……と、殿下に言われたのじゃ」
一瞬、ぽかんとする。
頭をめぐらせ、言葉の意味を理解しようと務める。
私は確認した。
「ええと、それはつまり、私と敵対するように勧誘されたと?」
「ああ、一言でいえばそういうことじゃ。なにやら殿下は、反ルチル同盟を築く……みたいな感じじゃったぞ」
ルビーロッドの言葉に、私は苦笑する。
「それはそれは。滑稽なことをはじめたものですわね」
「うむ。……まあ、勧誘は上手くいっていないようじゃったがな」
当然だ。
反ルチル同盟とやらを築くにしても、タイミングが悪すぎる。
これだけ学内でアレックスたちの不評が広がっているのだ。
上手くいくわけがない。
学内にも、私やミアストーン家に反発する勢力ぐらいは存在するだろうが……
現在のアレックスと手を組もうとは思わないだろう。
まあ、アレックスはアホだから、そういう空気は読めないんだろうけどさ。
「わらわは、おぬしとアレックスが好き合っていると思っていたが……どうやらそういうわけではないようじゃな」
「さて、それはどうでしょうね?」
と、言っておく。
もちろんアレックスのことは嫌いだが……
はっきり嫌いだと明言するのはまずい。
最終的には『アレックスを愛するルチルが、アレックスにこっぴどくフラれ、そのショックで生涯独身を決意する』というストーリーに持っていかなきゃいけないからね。
そのゴールのためには、表向きアレックスを愛しているフリをしておかなければいけないだろう。
「……おぬしにアレックスへの愛がないことぐらい、容易にわかる」
と、ルビーロッドは言った。
「まあ、あんな男と結婚する羽目になった自分の運命を恨め。わらわは、高みの見物をしながら笑うだけじゃ」
ルビーロッドはニヤニヤと楽しそうにいってくる。
大丈夫。
私は、私の運命を、必ず変える……!
時間はかかるかもしれないけどね。
――――第4章 完
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