第4章147話:観客の反応

だがゼリスは、戦いを続行する気満々である。


頭に血がのぼっているのか、周囲の声なんて聞こえていないようだ。


「買収された審判の判定なんて、聞く意味がありません! だから決闘は続けます!」


と、ゼリスがわがままを言っている。


そして私に斬りかかってきた。


私は、ため息をついた。


ゼリスの斬撃が迫る。


「えっ!!?」


しかし、私はゼリスの攻撃を難なく回避する。


すかさず彼女の首元に木剣を突きつけた。


「少し落ち着いたらどうですの?」


「~~~ッ!!」


明らかに勝負はついている。


なのに、ゼリスは私の剣を振り払い、ふたたび斬りかかってくる。


「まだ終わっていません!!」


ゼリスが叫ぶ。


完全に周りが見えていないようだ。


また斬りかかってくる。


空振からぶる。


そこに、私は足を出して、引っかけた。


ゼリスは思いきり足をすくわれ、地面にすっ転ぶ。


「ぐぶっ!!」


起き上がろうとするゼリスの顔の横に、私は切っ先を突きつける。


私は宣言する。


「私の勝ちですわ」


「くっ!!!」


「いい加減になさい。もう勝負はついて―――――」


「黙って!!」


私の言葉をさえぎって、ゼリスは立ち上がり、ふたたび斬りかかってきた。


空振る。


空振る。


空振る。


三連続で空振る。


四度目の斬撃。


その芯をとらえるように、私はキレのある斬撃を放つ。


「きゃあっ!!?」


ゼリスが吹っ飛ばされて、転んだ。


そこに、私はやはり、切っ先を突きつける。


観客たちがざわめく。






「これもうルチル様の勝ちだろ」


「なんで審判はジャッジしないんだ?」


「ゼリス、ダッセ」


「見苦しいにも程がありますわ」


「結局、ルチル様が順当に強かっただけですわね」


「むしろ、ゼリスさんが剣術12位というほうが、信じられなくなってきました。彼女のほうが不正なんじゃないかしら?」


「ルチル様に不正なんてなかったな」


「当然だろ。ルチル様がめちゃくちゃ強いのは、剣術学部生ならみんな知ってる」


「相手は軍司令官のご令嬢だぞ。子爵令嬢ごときが勝てるわけねーんだよ」






観客のざわめきを聞いている限り、ゼリスの味方はほとんどいない。


私が公爵令嬢だから、おいそれと悪口をいえないということもあるだろうが……


それ以上に、ゼリスの言動や態度がひどすぎた。


証拠もなく言いがかりをつけてきたり――――


あきらかに負けているのに、敗北を認めず、決闘を続行しようとしてきたり―――――


審判に対してまで買収の疑惑をぶつけたり――――


やりたい放題である。


だから、純粋に観客たちも、ゼリスの振る舞いを不快に思っていたのだろう。


誰もが、見るに堪えない、といった様子で、ゼリスの行動を見つめていた。







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