第4章143話:決闘の話題

決闘の噂は、即座に大学を駆けめぐった。


いつ決闘するのか。


なぜ決闘をするのか。


互いの主張や要求はなんなのか。


そういった話が、盛んに語られた。


しかし。


当たり前といえば当たり前かもしれないが、下馬評げばひょうはゼリス敗北が濃厚であった。


「まあ、どうせルチル様が勝つよな」


「逆転はないわよね」


「さすがに実力が違いすぎるよな。なんで子爵令嬢さんは、ルチル様に喧嘩売ったんだろ?」


「無謀ですよね」


「決闘、見に行くか?」


「私は見に行くつもりですわよ」






ちなみに。


ティールームでは、マキが怒り狂っていた。


「あの女……! 剣術1位のルチル様に喧嘩を売るとは、身の程知らずにも程がありますねッ!」


フランカも困惑の言葉を口にする。


「どうしてルチル様に決闘なんて……。ルチル様は、不正なんてしてませんよね?」


私は弁解した。


「しているわけないでしょう。言いがかりですわ」


エドゥアルトは、私に耳打ちをしてくる。


「まさか……殿下がけしかけた可能性もあったりするのでしょうか」


エドゥアルトは、アレックスと私が険悪な仲であると知っている。


だから、そのような推測が浮かんだのであろうが……


「それはないと思いますわよ」


と、答えておいた。


アレックスは今まで、こうも直接的な行動に出たことはない。


私のことをうとましく思っていても、大人しくしていた。


今回、ゼリスが私に決闘を申し込んできたのは、ゼリスの独断か……


あるいはゼリスの提案で、アレックスが了承した流れだろう。


「でも……ルチル様なら、勝てますよね?」


と、フランカは聞いてくる。


私は微笑みながら答えた。


「もちろんですわ。必ず勝利して、事実無根の疑いは晴らさせていただきますわよ」


ゼリスに負けるというビジョンは浮かばない。


しかし、勝負に油断は禁物だ。


一応、気を引き締めていこう。

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