第4章140話:決闘を申し込む

<ルチル視点>


翌日。


私は、エドゥアルトと二人で大学構内を歩いていた。


エドゥアルトは告げる。


「筆記試験、剣術試験における首位、おめでとうございます」


「ありがとうございます」


と、私は答えた。


「両方で1位を取るなんて、さすがはルチル様ですね。専属騎士として、鼻が高いです」


エドゥアルトは、心から尊敬しているといった様子で、賞賛してくる。


「剣術試験については、運が良かったですわ。次も好順位こうじゅんいを取れるように、精進しなければ」


「私も、ルチル様に負けないよう努力いたします」


「ええ、頑張ってくださいまし」


と。


そこまで言ったところで。


私の行く道をふさぐ者がいた。


「あの? ……ルチル・ミアストーン様ですね?」


彼女は……ゼリスだ。


遠巻きに顔を見たことがあるから覚えていた。


直接話すのは、これが初めてである。


私は答えた。


「ええ、私は確かにミアストーン家のルチルですが」


「私は、ゼリス・キネットと申します。突然ですが、あなたに、申し伝えたいことがあります」


「何ですの?」


問いかけると、ゼリスは、何かを投げつけてきた。


その何かは、私に当たったあと、地面にぽとりと落ちる。


私は、目を見開いた。


彼女が、投げつけてきたのは――――手袋。


決闘を申し込むためのグローブであった。


「あなたに決闘を挑みます。私と、一対一の勝負をしてください!」


毅然と言い放ってきたゼリス。


周囲にいた者たちが、こちらを振り返る。


ざわめきが広がった。


エドゥアルトも、驚きに、目を見開いていた。


まさか……私に決闘を挑んでくるとは。


まったく予想斜め上の行動である。


(いったい何を考えているのかしら?)


と、私は困惑する。

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