第4章135話:噂について

「まあ、しばらくは様子見でいいかな」


と、ぽつりつぶやいた。


しかし。


3日後。


ティールーム。


私とマキとフランカでテーブルについて、お茶を始めようとしたとき。


マキが、


「ルチル様、折り入って、お耳に入れておきたいことがございます」


と、前置きしたうえで、切り出してきた。


「アレックス王子の噂については、ご存知でしょうか?」


「ええ。存じていますわよ」


私は答える。


フランカは確認してきた。


「……それって、殿下が子爵令嬢と懇意になされているという噂でしょうか?」


「はい」


と、マキが肯定した。


さらに、マキは言ってくる。


「どうやらその噂……ただの噂ではなく、真実のようです。殿下は、子爵令嬢ゼリスと交際をしていると」


「そうみたいですわね」


「……ルチル様は、お二人のことをどう思っておられるのですか? さすがに今回のことは、殿下の所業といえど、見過ごしていいものではないと思いますが」


見過ごしていいものではない、か。


マキの視点から見れば、そう思うだろうね。


なにしろ、マキは、私と王子の婚約を、普通に祝福している。


私が内心、王子と破局したいなどと思っているとは、想像だにしていないのだ。


「ただの"遊び"でしょう? 放っておけばよろしいですわ」


私は答えた。


「ですが……」


と、マキは不安げな声をもらす。


「いずれ王子も、自分のあやまちに気づく日が来ますわよ」


と、私は伝えておいた。


まあ、そんな日は来ないだろうけどね……と、内心では思いながら、お茶を飲む。


「……」


そんな私の横で、やはりマキは不安そうな顔をしていた。







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