第3章119話:簡単な講義、難しい講義


「そうですね。貴族のみなさんなら、作法学や作法実習などはどうでしょう?」


「作法……ですか」


「テーブルマナーや社交マナー、社交ダンスなど、マナーレッスンを行う講義です。貴族の方ならほとんど勉強せずとも単位が取れると思います」


貴族にとってのボーナスチャレンジみたいなものか。


「逆に、これは取っちゃいけないっていう講義はありますの?」


「鍛冶実習です」


エドゥアルトが即答した。


あまりの即答だったので、私はたじろいでしまう。


マキが聞いた。


「なぜ鍛冶実習はダメなんです?」


「教授がちょっとアレな人で……」


エドゥアルトがどう『アレ』なのかを説明した。


「去年のことですが、その教授は延々と自身の鍛冶スキルを自慢した挙句、学生の作った製作物を散々罵倒し、挙句には全員単位を落とすなんてことをやられました」


「それはなかなか……えぐい教授ですね」


フランカが苦笑いで言った。


エドゥアルトは静かな怒りをこめた声で答えた。


「はい。あれは本当にひどいと思います。あの教授の講義は二度と受けません」


……エドゥアルトも被害者かい。


又聞きではなく実体験に基づく話なら、信憑性がありそうだ。


誠実なエドゥアルトがここまで言うのだから嘘ということもあるまい。


その教授の講義は受けないでおこう。


「それから【魔法史概論】はテストが異常に難しいです。私はテストで一問も解けませんでした。なぜか単位は取れましたが」


「一問も解けなかったのに単位が取れたんですか?」


マキが尋ねるとエドゥアルトは肯定した。


「テストはダメでしたが講義にちゃんと出席していたからでしょうか……出席点でなんとか単位を拾えたんだと思います」


なるほど。


そういう講義もあるのか。


出席点、ねぇ……。

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