第3章116話:ティールーム購入


受付嬢によると、現在、ティールームはそこそこ部屋が空いているようだ。


前年度に20回生の学生が卒業していったので、そのぶんの部屋が空いたわけだ。


3階の部屋が2つ空いていた。


そのうちの1つを確保することにした。


「わたくしは3階の部屋を購入したいと思いますわ」


「私は2階の部屋を」


マキがそう述べる。


「では……私も2階で」


フランカも部屋を決める。


お金を払い、部屋の利用許可証と鍵を受け取る。


一度部屋を確認してみようと、上階への階段を昇る。


その途中、フランカは不満げに言った。


「上級食堂200万ディリンに続き、ティールームが500万ディリン……この大学、お金がかかりすぎませんか?」


「貴族ですから、仕方ありませんわね」


上級食堂を利用したり、ティールームを利用することは、貴族の特権ではあるが、義務でもある。


貴族は見栄を張る生き物だ。


自分の名誉も気にするし、他人の名誉も気にする。


たとえば貴族なのに一般食堂を利用するとか、


たとえば貴族なのにティールームを持たないとか、


そういうのは必ず嘲笑の対象になる。


だからこそ、イヤでもお金を払って「見栄を買う」のだ。


貴族社会は面倒くさいのである。


(まあ茶会に関しては、開いたほうが得でもあるからね)


茶会は貴族の子息にとって交流の場だ。


人脈形成や、商談の場でもある。


だからお金を払ったぶんのリターンはある。


―――部屋番号を頼りに、自分の部屋にたどり着く。


3階の一番端の部屋だ。


鍵を開けて中に入った。


窓がある。


家具などは何も置かれていない部屋だ。


キッチンが壁に設置されている。


入り口のほかに、扉が二つある。


一つはトイレ。


一つは風呂である。


(バスルームがあるんだ……無駄に料金が高い理由はこれか)


お風呂というのは貴族だけしか利用できない高級設備だ。


「まずは家具を買って運びこまないといけませんわね」


本当にお金がかかるな、と苦笑しながら、私はいったんティールームを出ることにした。





それから二日後。


私は王都で家具を買って、ティールームへと運び込んだ。


テーブル。


ソファー。


椅子。


天蓋つきのベッド。


持ち込んだ書物と書棚。


そして茶会用のティーセット。食器と食器棚。


よし、完璧だ。


(茶会用どころか、ここで生活できるぐらいの部屋にしてやったわ!)


ベッドも設置したしね。


大学から屋敷に帰宅するのが面倒くさいときは、ここで寝泊まりしてもいいね。


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