第3章100話:入学式


ほどなくして入学式が開会した。


司会の者が声量を大きくする【拡声の魔石】を使って挨拶を始める。


「それでは当大学の学長より、お言葉をいただきたいと思います」


司会の指示で、大学の学長が、講堂前方に置かれた台のうえに登壇する。


そうして語り始めた。


「新入生の諸君、入学おめでとう。はじめに、この大学の指針について述べさせてもらう」


拡声の魔石を手に持って話している。


しかし単に声量が大きいだけでなく、よく通る声だ。


演説などが上手いタイプだろう。


「諸君の中には、貴族もいれば平民もいるだろう。だが、この大学は実力が全てだ」


平民、貴族を平等に扱う実力主義であると学長は主張する。


「平民であれ実力を示せば、貴族と同等の待遇を受けられる。逆に貴族であっても不出来であれば、不遇な処置をとらせてもらう。それがダイラス魔法大学のモットーである」


学園長は一拍置いた。


そして続けた。


「なお、この大学には四つの学部が存在している」


剣術学部。


魔法学部。


商学部。


芸術学部。


一つずつ、簡潔に解説する学園長。


まあ、学部名からして、どういう学部なのか察しがつく。


「しかし、学部の垣根を越えて学びあえるカリキュラムも多く用意している。互いに切磋琢磨し、王国を担う人材へと育っていってもらいたい」


以上だ、と大学長は締めくくる。


拍手が起こった。


学園長が壇から降りるのかと思いきや、そこに留まって続けた。


「次に新入生代表から式辞を述べてもらうが……知ってのとおり、新入生総代は毎年、学術試験の首席が選ばれることになっている」


学術試験は全学部共通の試験だ。


だから学術試験の首席が、新入生代表として式辞を読むことになっている。


「今年の首席は、驚くべき結果を残した。全科目9割以上の得点、かつ、数学が満点だ。この数学の得点は、歴代で一度も達成できた者がいない偉業である」


講堂にざわめきが起こった。


口々に噂をする声がする。


「数学満点って、怪物すぎるだろ」


「あたし、半分も解けなかったわ」


「あのテストで満点はヤバイよね」


同じテストを受けただけに、学生たちの衝撃も大きかったようだ。


と、そこで「静粛に」と学長が呼びかける。


そして言った。


「このような優秀な学生と学べることを誇りに思うがいい。では―――その者の名を呼ばせてもらおう。ルチル・ミアストーン! 前へ!」


私が新入生代表なのは知っていた。


事前に知らされていたからだ。


でもですね……学長。


無駄に大げさな紹介はやめてほしかったです、はい。


とにかく、立ち上がる。


前に進んで登壇した。


「ご紹介に預かりました、ルチル・ミアストーンです。このたびは新入生の式辞を読ませていただくことになりまして、光栄に存じます――――」


と、前置きしてから、私は式辞を読み始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る