第3章99話:ルビーロッド
大学を歩く。
学内は、とても広い。
小さな街ぐらいの大きさはある。
実際、街を歩いているような感覚だからだ。
芝生のうえに道が走る。
その道はいろいろな方向に枝分かれし、建物や棟へとつながっている。
建物は一つだけぽつんと建っているものもあるが……
たいていは、いくつかの建造物が密集している。
「本当に広い大学ですよね」
同じことを思っていたのか、フランカがつぶやいた。
「ええ。移動だけでもなかなか大変そうですわ」
一番端から端の建物まで、徒歩で15分以上はかかりそうだ。
こういう広さなので、移動のために、馬車を利用できるサービスが用意されているらしい。
学内に乗り合い馬車があるってすごいよね。
講堂に辿り着く。
堂内に入ると、そこは広い空間だった。
長椅子が並べられている。
前方のほうには講壇となる台が置かれていた。
すでに多くの学生が着席し始めている。
「わたくしたちも座りましょうか」
「ルチル様……私はここで」
エドゥアルトがそう主張してきた。
まあ、エドゥアルトは新入生ではないからね。
「わかりましたわ。また後で」
「はい」
エドゥアルトが去っていった。
さて、どこか適当な席にでも座ろう。
そう思ったときだった。
「久しぶりじゃな。ルチル!」
呼びかけられて振り返る。
「……ごきげんよう。ルビーロッド」
そこに立っていたのは公爵令嬢ルビーロッドだった。
ゲームにおいて、主人公たちの良き相談者として活躍してくれたキャラだ。
「なあ、聞いたかルチルよ」
「何をですの?」
「実は、わらわは入試の成績において、魔法学部の首席だったのじゃ!」
ああ……
そういう設定もあったね、確か。
ちなみに、私は学術試験で首席であって、実技試験は首席ではない。
ルビーロッドの言う首席とは、実技のほうのことだろう。
彼女はニヤニヤした顔で聞いてくる。
「おぬしも魔法学部を受験したのじゃろう? おぬしと! 同じ学部で! わらわが首席! これが何を意味するかわかるか?」
「……さあ、何を意味するんでしょうね?」
「教えてやろう。それはな、わらわが1番で、おぬしが2番以下ということじゃ! つまりおぬしとわらわは格が違うということじゃな! ふはははははは!」
ルビーロッドが高笑いする。
「まことにテストとは残酷じゃのう。今までハッキリしなかった現実というものを、誰にでもわかる形で突きつけるんじゃからの。まあこれからは? わらわ未満の実力だと自覚して、貴族社会の隅でひっそり生きることじゃな? ではな!」
言いたい放題言ってから、ルビーロッドは立ち去っていく。
マキは青筋を浮かべていた。
フランカは困惑している。
「なんだか、すごい方でしたね。あの方も貴族なんですよね」
「公爵令嬢ですわね」
「公爵令嬢!? それってルチル様と互角ということですか!?」
フランカが驚いて尋ねる。
マキが肩をいからせて否定した。
「互角なんて無礼な! ルチル様のほうが格上です! ルチル様は第一王子の婚約者ですから!」
ここで第一王子カードが役に立つとは!
はじめて役に立ったんじゃないかな、あの王子。
「それなのにあんなに言いたい放題……ルビーロッド様は、品がないお方ですね!」
マキが憤慨する。
とはいえ、さすがにマキもルビーロッドに直接対峙するのは避けていた。
こうして愚痴を漏らすに留まっている。
公爵令嬢が相手だし、喧嘩売ったら大変なことになるものね。
「まあ、ルビーロッドのことはともかく、わたくしたちも席に座りましょう。そろそろ式が始まるみたいですから」
私はそう告げた。
二人は同意し、適当に席を探して座る。
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