第3章101話:それぞれの視点



<ルビーロッド視点>


ルチルが登壇したことに、悔しさを抱いている者がいた。


ルビーロッドである。


(ぐぬぬぬぬ! なんであやつが代表なのじゃーー!?)


声には出さなかったが、腹の底で叫ぶ。


――――ルビーロッドは魔法学部の首席を取った。


しかし、それはあくまで各学部のトップというだけに過ぎない。


対して、ルチルは全学部共通試験のトップ……新入生総代。


格の違いは明らかだった。


(おのれルチル!! 次の試験では絶対倒す!)


そしてルビーロッドはひそかにライバル心を燃やすのだった。







<アレックス視点>


悔しさを抱いていたのは、ルビーロッドだけではなかった。


婚約者たる第一王子も、憤怒の形相を浮かべていた。


(入試で手加減をしないばかりか、首席を取るだと!?)


アレックスは、ルチルに手加減をしろと、確かに命じた。


婚約者が優秀すぎると、王子としての威厳がかすんでしまうからだ。


ところが、ルチルはそれを、およそ考えつく最大の方法で裏切ってきた。


(ルチルめ……どこまでも目立つことが好きな女だ!)


今回のことは、女王の耳にも入るに違いない。


女王は別にアレックスを責めはしないだろうが……内心、どう思うだろう?


あるいは、他の貴族や有力者たちは?


"ルチルに比べてアレックス王子は"……などと、陰で笑うかもしれない。


(あんなやつが婚約者だと、俺の面目が潰れ続ける!)


アレックスは、ルチルを心底いまいましいと思った。


早急になんとかしなければと思うのだが、良い方法が思いつかず、ただ歯ぎしりするばかりであった。






<ラクティア視点>


一方、ルチルのことを素直に尊敬する者もいた。


ラクティアである。


ラクティアは、ルチルの凄まじさを実感していた。


(私も数学は頑張ったけど……)


入試は平民と貴族で、得点源が違う。


貴族の子息が得点源としやすいのは外国語や政治経済の試験だ。


逆に、平民にとっては数学を得点源とする者が多い。


入試レベルの数学なら、地道に頑張れば、独学でもそれなりの点数が取れるからだ。


とはいえ。


(あのテストで満点なんて絶対に無理。後半なんて問題文の意味すらわからないものも多かったし……)


問題文もそうだが、何より時間制限がきつかった。


最後まで解き切るなんて、よほど頭が良くないと不可能だ。


(ルチル様って、凄い人なんだ……)


さきほどルチルに助けてもらったことも相まって、ラクティアの中のルチルの評価が爆上がりしていた。



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