第3章95話:主人公たち


後ろに四人の取り巻きを引き連れている。


どれもパーティーなどで会ったことのあるような名家の令息だ。


私はとりあえず挨拶した。


「ごきげんよう。殿下」


「ちやほやされて、良いご身分だな」


「あら。殿下のほうがちやほやされているのでは?」


「いいや。俺への注目なんざ小粒だ。お前のソレに比べればな」


「そうですか」


「来週には入試結果が張り出される。お前がどれだけ無様な点数を取ったか、楽しみにしている」


「それはそれは。殿下を楽しませられると良いのですが」


「ちっ……やはり生意気な女だ」


そう鼻を鳴らして殿下が去っていく。


相変わらずの態度だ。


取り巻きたちが後を追っていく。


あんなやつの取り巻きになるなんて、かわいそうな令息たちだと思った。





(そういえば、私の取り巻きはどこかしら?)


軽く周囲を見回して、探す。


あ、いた。


マキである。


向こうもこちらに気づいたようだ。


「おはようございます、ルチル様。それとエドゥアルトさんも」


マキが挨拶をしてくる。


まず私に。


それが終わったらエドゥアルトにも。


さすがご令嬢たちだ。挨拶一つで育ちの良さが伝わってくる。


優雅な立ち居振る舞いである。


「ごきげんよう。あとはフランカだけですわね」





私が言うと、マキが肩をすくめた。


「子爵の娘なのに、私よりも合流が遅れるなんて……フランカさんというのは、ずいぶん礼儀のなってないご令嬢ですね」


マキは辺境伯令嬢。


身分と振る舞いにうるさいタイプの令嬢だ。


公爵令嬢である私には従順だが、伯爵以下にはなかなか手厳しいところがある。


ある意味、正しく取り巻きをやっていると言えるが。


「まあまあ、そう言わないでマキ? 取り巻き同士でいがみ合うのは、好ましくありませんわよ」


私はフランカのフォローをしつつ、釘を刺しておく。


「う……失礼いたしました、ルチル様。以後、気をつけます」


マキがそう謝罪した。


エドゥアルトが提案する。


「まだ時間はありますし、探してみますか?」


「そうですわね」


一番ありえそうなのは、正門ですれ違ったケースだ。


一度、きびすを返して戻ろうとする。


と、そのときだった。


「ふざけるなよ!」


右方向から、怒号が聞こえてきた。


そちらを向くと、どうやら口論しているようだ。


一人の男子学生が、女学生をかばって、男女3人と言い合っている。


「ん……?」


というか、あの2人、見覚えあるぞ。


(あーーーー!! そうだ! 主人公2人組だ!)


思い出す。


ゲームでは、男主人公と女主人公の2人がいて、ゲーム開始時に選べる仕様になっているのだが……


目の前にいるのが、まさにその主人公2人だ。


女学生をかばっているのが、男主人公のレオン。


そしてかばわれているのが、女主人公のラクティアだ。


ああ……


こういうシーンあったな。ゲームで。


一番序盤の、イベントスチル付きのシーンだったはずだ。


ラクティアとレオンが出会う場面である。

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