第3章94話:入学の日
翌月。
春。
4月6日。
私は116歳となった。
そしていよいよ、入学の日だ。
朝、起床。
天蓋つきのベッドから起き上がる。
廊下を歩いて洗面所へ。
そこで顔を洗った。
1階に行き、食堂へ。
料理係と使用人が朝食の用意を済ませてくれているので、食べる。
メニューは小麦パン。
牛乳。
野菜のスープ。
スクランブルエッグのマヨネーズ添えだ。
「ごちそうさま」
食べ終えると、後片付けは使用人に任せ、一度自室へ。
支度を済ませ、準備は完了。
一階のエントランスへ下りた。
手のあいている使用人たちが、見送りに来てくれた。
メイド長が代表して、言葉をくれる。
「ご入学おめでとうございます、お嬢様。いってらっしゃいませ」
「「「いってらっしゃいませ!」」」
使用人一同が復唱する。
私は微笑んだ。
「ええ。いってきますわね」
玄関を開けて外に出る。
冬があけて、すっかり庭園には緑が戻っていた。
花と草木が美しい。
馬車の前にエドゥアルトが待っている。
「ご入学おめでとうございます、ルチル様。では、参りましょう」
「ええ」
私たちは馬車に乗り込んだ。
すぐに馬がいななき、馬車が動き出した。
この世界の大学は特殊だ。
115歳から入学することができる。
卒業は20年後……
つまり20回生になり、卒論を提出して卒業となる。
20年も在学するとは、とんでもない話だね。
ダイラス魔法大学は王都に巨大な敷地を有する名門大だ。
小さな街ぐらいの敷地面積がある。
王都の中央広場から西に行ったところに位置する。
貴族・平民問わず、入学が可能である。
在学生の数は約4000人。
新入生は約200人。
つまり合計4200人の学生が通う大学になる。
ちなみに学生の割合としては平民が9割以上を占めている。
もっとも、そういう学生たちが真の意味で「平民」と言えるかどうかは微妙ではある。
この国の識字率はおそらく2割を下回る。
つまり魔法大学に通える時点で、その2割に入っているわけで、平均的な庶民のレベルを超えているのだ。
まあ、
本が読めて、
文字が書けて、
おつりの計算ができる……
ただそれだけでも、優秀とされるからね。
大学に通う平民は、そういうエリート寄りの平民だといえるだろう。
ダイラス魔法大学の正門に辿り着く。
私は馬車を下りて地に立った。
門を見つめる。
門衛が左右に立っている。
門衛の横には、異世界の文字で「入学式」と書かれた看板がデカデカと置かれている。
そして正門を学生や教授がくぐって歩いていた。
全員が私服だ。
まあ大学だしね。
平民とおぼしき学生。
貴族とおぼしき学生。
どちらもいる。
私もそんな学生たちに混じって歩き始める。
しかし、すぐに遠巻きに噂する声が漏れ始めた。
「ルチル様だ……」
「見て、ルチル様よ」
「お美しい」
「すごい有名な人なんだって」
「公爵家のお姫様だよ」
まあ、注目されるのはしょうがないか。
公爵令嬢だし、第一王子の婚約者だからね、私。
「おい」
と。
噂をすれば、第一王子様が現れた。
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