第2章77話:アリアと別れる
私は告げた。
「アリア。侯爵領に来たついでにメルトルーンにも行ってきなさい」
「メルトルーン……といえば、東海岸にある海の街ですか」
「ええ。商会をさらに大きくするためには、船による交易も必要でしょう。そのための視察をしてくるといいですわ」
「おっしゃる通りでございますね。承知いたしました。用事が済んだら訪れてみます」
「ついでにロブスターの販路も構築してもらえますかしら?」
「ロブスター、ですか? それはいったい何でございましょう?」
アリアも知らないか。
これは私が普及させてやるしかないね。
「海のザリガニですわ。なかなか美味な食べ物なので、王都や公爵領でも流行らせたいと思っています」
「なるほど。ルチルお嬢様がそのように仰るのでしたら、間違いないのでしょう。わかりました、ではそのように致します」
そして二、三、言葉を交わしてからアリアと別れた。
フランカがアリアの背中を見つめながら、つぶやく。
「なんだか、とても優秀そうな方でしたね」
私は誇らしげに言った。
「実際にアリアは優秀ですわ。彼女がいれば安心して商会経営を任せられますもの」
完全委託方式だから、商会の仕事はアリアに丸投げだ。
私はたまにアイディアを出したり経営方針を示すだけ。
それでぐんぐん売上が伸びている。
今年度の年商も右肩上がりは間違いないだろう。
侯爵領を出てからは、まっすぐに帰路を進んだ。
村や街、都市を経由しながらホーレン伯爵領へ。
伯爵領の【ルンケン村】で、ジャガイモが栽培されていたので、購入したいと思った。
私がジャガイモを欲しいといったら、栽培していた農民は驚いた。
「珍しいですね。みんなジャガイモには毒があるって怖がるのに」
「適切な処理をすれば、毒は除去できますから」
「へえ、よく知ってますね。その通りですよ。芽を除けば毒もなくなるのに、食べないやつぁ大馬鹿者ですよ」
「あははは。それで……売ってもらえますかしら?」
「ああ、もちろんです。格安で売りますから、好きなだけ持っていってくださいませ」
かくして私はジャガイモを手に入れた。
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