第2章64話:魔人騎士



(魔人騎士……)


それがこいつの名称だ。


見た目としては、騎士ではなく鎧武者ではあるのだが……ゲームではそう名付けられていた。


人ではない。


人型の魔物である。


(正直倒せるかどうか微妙だけど、できれば今のうちに倒しておきたいんだよね)


こいつを倒して得られるのはスキル石。


それは、魔力自動回復のようなスキルよりも遥かに重要なスキルだ。


あるとないとでは今後の異世界生活が激変するだろう。


ただ……


魔人騎士を倒すのは大変である。


というのも、この魔物からスキル石を得るには、ソロで戦って勝たなければいけない。


パーティーで倒したらダメなのだ。


1対1の勝負で撃破しなければ、スキル石をゲットできない仕様である。


「あなたに会いにきました」


私は魔人騎士に声をかけた。


「わたくしと戦っていただけますか? そして、わたくしが勝ったら、あなたが持つスキル石を頂戴したいです」


「ほう。我の持つスキル石のことを知っていようとは」


魔人騎士が反応を返してくる。


くぐもった鎧の低い声。


エドゥアルトが驚く。


「言葉を話した……? 彼は魔物ではないのですか?」


「言語を解する魔物……まあ、魔族に近い存在ですわね」


たしかゲームの設定では、歴戦の武者が着ていた鎧に、魔の心が宿った存在だとされている。


九十九神のような存在かもしれないね。


「問おう。貴様、何者だ?」


魔人騎士が誰何してきたので、私は答える。


「ルチルと申します。公爵家の令嬢ですわ」


「公爵……か。なるほど、貴族のツテを使って我のことを調べたか」


「まあ、そんなところですわ」


実際は、魔人騎士のことはゲーム知識で知ったのだが、本当のことは言うまい。


「いいだろう、望み通り相手になってやる」

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