第2章63話:カルッシャ海岸
カルッシャ海岸は、何もない浜辺だ。
カルッシャ海岸という地名も、ゲームにはあったが、この世界にあるかはわからない。
近くに街があるわけではない。
港があるわけでもない。
ただのフィールドである。
ひとけのない砂浜。
正面を海、背面を山と森に囲まれた海岸。
海は静かだ。
海鳥の鳴く声が穏やかに聞こえてくる。
あるかなきかの潮風と、潮騒の旋律。
寂寥感さえ感じさせるような……そんな浜辺であった。
そしてここに、とある魔物が現れるはずなのだが。
(うーん、いないっぽいね)
必ず出現するわけではない。
確率がランダムなのだ。
今は、どうやら出現していないようだ。
「ここが目的地なのですよね?」
エドゥアルトが聞いてきた。
私はうなずく。
「そうですわ。ここに人型の魔物が現れるはずなのですが」
「それらしき姿はありませんね」
エドゥアルトがぐるりと周囲を見渡しながら、言った。
一方、フランカは視線をじっと海に向けていた。
物憂げな目をしている。
「これが海、ですか……すごいですね。ずっと向こうまで続いていて、果てが見えません」
「そういえばフランカは、海を見るのが初めてなんですわよね」
「はい。本で読んだことはありますが、実物を見るのは初めてです」
フランカは砂浜に立って、茫洋とした海を眺めた。
私とエドゥアルトもそれにつられて、静かに海を見つめる。
寄せては返す波の音。
心が洗われていくようである。
……と。
そのときだった。
「……!」
ふいに気配を感じた。
砂浜の向こうから、何者かが近づいてくる。
――――全身を禍々しい鎧に包んだ戦士。
大剣を背中に掲げ、砂浜を悠然と歩いている。
こいつだ。
私が探していた相手は。
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