第2章31話:スキル商人




スキル商人の前に立つ。


すると、商人は挨拶をしてきた。


「いらっしゃいませ。ここは掘り出し物を扱う秘密の露店ですよ」


フードをかぶっているので、顔はわからず、口元しか見えない。


しかし、女性の声だ。


「ここでスキル石が売られている……と聞いてやってきたのですけれど」


聞いた……


わけではなく、ゲームで知ったことだけど、そういうことにしておく。


スキル商人の女性はふふふと笑った。


「お客様は情報通でございますね。いかにも。こちらではスキル石を扱っていますよ」


「よかった。では、品物を見せてもらえますかしら?」


スキル商人はうなずき、小袋を取り出した。


そこからスキル石を取り出す。


宝石のようにきらめく鉱石だ。


スキル商人が最初のスキル石を解説する。


薄水色のアクアマリンのような鉱石だ。


「こちらは洗浄魔法のスキル石。一瞬で身を清められる【洗浄魔法】を習得できます」


「買います!」


「即答ですね。ただ、これは1000万ディリンもする高額商品です。予算はおありですか?」


スキル商人に尋ねられ、私はバッグに手を突っ込む。


バッグから取り出した……と見せかけてアイテムボックスから大金貨10枚を取り出す。


大金貨1枚=100万の価値がある。


10枚で1000万ディリンだ。


それをスキル商人に差し出してから、言った。


「では、貰いますわね」


私は洗浄魔法のスキル石をアイテムボックスに放り込んだ。


スキル商人は唖然としつつ、言った。


「な、なるほど……裕福そうな身なりをしていらっしゃると思ってましたが、大変なお金持ちのようですね」


「それほどでもございませんわ。で、次のスキル石を見せていただけます?」


「かしこまりました。ではお次はこちら」


スキル商人は続いて青色のスキル石を取り出した。


「【結界魔法】のスキル石。生き物の侵入を防ぐ結界を展開できます。ただし魔物の侵入を防ぐことはできません」


「買います」


「……こちらの価格は2500万ディリンでございますが」


「大丈夫ですわ」


私は2500万ディリンをサッと提出する。


スキル商人は口をあんぐりと開けた。


これで結界魔法もゲットだ。


魔物の侵入は防げない……という欠点を加味しても、かなり使い道があるスキルである。


「で、ではこれならどうですか。こちらは対象物が食べられるかどうかを判定する【可食判定魔法】のスキル石で――――」


「買います。それは絶対欲しいです!」


「……5000万ディリンになりますが」


私は迷いなく5000万ディリンを取り出し、スキル商人に差し出した。


数千万を既に払った直後で、何のためらいもなく5000万もの大金を支払う私に、スキル商人はただただ驚愕していた。

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