第1章2話:異世界と勉学

5年が経った。


105歳。


すっかり異世界の生活にも慣れた。


最初は常識の違いに困惑したりもした。


まあ、いきなり100歳からスタートするぶっ飛んだ世界だ。


非常識なこともそこそこある。


(ちなみにこの世界の人間の寿命は5000年らしい。やはり非常識にも程があるね)


でも人間とは不思議なもので、長く暮らしていると、適応していく。


私は結構、この異世界を楽しみ始めていた。






この年のはじめ、私に家庭教師がつけられることになった。


学問、


芸術、


剣術、


魔法などを学ぶためである。


――――4月。昼。


自室にて、この日も勉強だ。


学問を担当する家庭教師は語学、算術に関するテストを出してきた。


それを解き終わって、採点をつけてもらう。


家庭教師は感嘆かんたんの声をもらす。


「ルチル様は、大変優秀でいらっしゃいますね」


「そうですの? 自分ではわかりませんわ」


5年も経てば、このようなお嬢様口調じょうさまくちょうも慣れたものだ。


「はい。あらゆる学問で高い成績をおさめておられますが、特に算術が素晴らしい」


前世において私は理系大学生であり、工学部だった。


理系科目は得意分野だ。


……が、そこを差し引いても、この世界の学問レベルは低い。


つまり、簡単すぎるのだ。


数学の専門書に書かれるレベルの問題でさえ、前世に比べるとやさしすぎる。


これだと間違うほうが難しいと思う。






そして。


私が最も関心を寄せたのは、もちろん魔法である。


ちなみに私の適性は水魔法だった。


人にはそれぞれ魔法の適性がある。


適性となった属性の魔法は、成長しやすい。


「魔法とは、イメージです」


魔法の家庭教師はそう述べた。


――――魔法はイメージによって形成される。


どんな魔法を使いたいか、しっかりと頭の中でイメージしたうえで詠唱する。


それが魔法の使い方である。


しかし……


何度か魔法を行使するうち、私はあることに気づいた。


それは科学的な原理を考えたほうが、より魔法の威力や性能が高まるということである。


たとえば水魔法では、水の原理や分子式を考えながら魔法を行使したほうが良い。


そのほうが魔法の習得も早まることもわかった。


「お嬢様は、魔法の飲み込みがお早いですな」


家庭教師もそうめてくれた。


魔法を学ぶにあたって、前世で学んだ科学知識や理系知識が大いに役立つ。


そう理解した私はすっかり魔法に魅入みいられ、ますます習得にはげむのだった。

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