第十一話 リーシャとオーガ

 時はガーベと別れてから少し後。

 現在、リーシャは件の少年と共に村へと戻ってきていた。


「っ……これは!」


 至る所が破壊された村。

 そして、助けを求めて走る村人たち。

 それの中心にいるのは。


 巨大な体躯を持つ怪物。

 オーガだ。


(数が多いですね……オーガが四体となると、リーシャだけでは——)


 いや、弱音を吐いている場合ではない。

 だってリーシャは仮にも勇者なのだから。

 人の役に立てるのならばやるしかない。


「リーシャがオーガを引きつけます! キミはみんなと一緒に村から離れた場所へ逃げてください!」


「でもお姉さんは……」


「大丈夫です! こう見えてもリーシャはとっても強いんです! だからリーシャを信じてください!」


「っ……う、うん!」


 と、走っていく少年。

 さて、となればリーシャのやることは一つだ。


(四体を同時に相手にするのは無理です! だったら、相手が油断している初撃で——)


 そこまで考えた直後。

 リーシャは地面を蹴って全力で疾走。

 

 目指すは家の中に首を突っ込み、隙だらけに背中を晒している個体。

 まずは初撃でこの個体を——。


「倒します!」

 

 斬ッ!!

 と、リーシャの攻撃は寸分違わずオーガの首へと直撃。

 結果、大切な部分を失ったオーガはバランスを崩し、そのまま背後へと倒れ動かなくなる。


(本当ならこの調子で残り三体もいきたいところですけど……)


「オ、オンナダァ」


「ツレテ……カエル」


「ハンショク、コブクロニィ」


 と、近づいてくるのはオーガ三体。

 当然のことだ。


(オーガは知能が低いとは言いますが、さすがに仲間が殺されて気が付かないほどではないですよね)


 要するに、ここからは実力勝負。

 奇襲も不意打ちもできない。

 リーシャ自身の力で、三体のオーガを同時に相手する必要があるのだ。


(負けは許されません!)


 そうでなければ、リーシャの次にオーガのターゲットになるのは村の人達なのだから。

 直後。


「っ!」


 リーシャは再び疾走。

 やることはシンプルだ。


(相手はパワータイプ! そういう時の戦い方は一撃で倒すか——)


 斬ッ!


 リーシャは一番端にいたオーガの右腕を、すれ違いざまに切り飛ばす。

 そして彼女はそのまま奴らの背後へと駆け抜ける。


 一撃離脱。


 これこそがパワータイプの敵への攻略法。

 これならば相手の反撃を喰らうことなく、相手を一方的に倒せるのだから。


「まだです!」


 リーシャはすぐさま反転。

 再び地面を蹴って疾走——次に狙うは。


 斬ッ!


 先ほど腕を切り飛ばした個体。

 リーシャが今度狙ったのは首だ。

 ただでさえ先の一撃で怯んでいたその個体は、半ば無抵抗で首を落とされる。


(これで一体……残りは二体です!)


 これなら行けるかもしれない。

 などと、リーシャがそんなことを考えた。

 その瞬間。


 ガシッ!


 と、掴まれるリーシャの足。

 掴んでいるのは当然——。


 ドガンッ!


 と、最後まで考えるまもなく。

 リーシャは足を支点に、思い切り地面へと叩きつけられるのだった。

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