第十話 欲望で繋がった最強の仲間達
「し、死ぬ…….く、くそ! あのガキとリーシャのせいで死ぬ! クソがぁああああああああああ!」
死にたくない。
ガーベはまだ童貞なのだ。
金持ちにもなっていない。
なのに死ぬなんてあんまりすぎる。
「グゲゲッ!」
と、さらに近寄ってくるゴブリンたち。
彼らはもはや手を伸ばせば触れられそうな位置に来ている。
(本当にこのまま終わるのか……いや、終わらない! 終わらせない!!)
最後まで足掻いて見せる。
絶対に諦めたりなんてしない。
(俺は大物配信者になって、借金返済して金持ちになって……メス奴隷をイジメながら暮らすんだ!)
その夢を掴むためなら、どんな不可能だって覆してみせる。
考えたのち、ガーベは目の前にゴブリンたちを睨みつける……そして。
「……したい」
「ゲゲ?」
「俺はリーシャを……あの女をメチャクチャのドロドロにして、屈服調教配信がしたい! そしていずれは世界中の女を屈服させたい!!」
「?」
「お前たちもそうじゃないのか!? 偉大なるゴブリンたちよ! お前達も女が好きなんだろう!? 女をめちゃくちゃにして、自らの奴隷にするのが好きなんだろ!?」
「グゲ! グゲゲ!」
「俺はお前達だ! そして、お前たちは俺なんだ!!」
「!?」
「この場にいるのはゴブリンと人間じゃない! 魔物と冒険者でもない! 俺たちは……なぁ、俺たちは同じ志しを持った——」
「ナ、ナガ……ナガマ」
「っ!」
喋った。
今確かにゴブリンが喋った。
(気のせいなのか!? ゴブリンが喋るなんて聞いたことがない!)
などなど。
ガーベがそんなことを考えている間にも。
「グゲ!」
と、ゴブリン達の一体がさらにガーベへと近づいてくる。
そのゴブリンはゆっくりと腕を上げると。
「ゲゲ!」
なぜかガーベへと、ゆっくり拳を向けてくる。
無論そこに攻撃の意思は感じられない。
むしろ何かを待っているような。
(まさか……そういうことなのか?)
ゴブリンは凶暴な魔物。
意志の疎通ができた例などない。
けれどまさか。
「っ」
ガーベはゴブリンと同じように、ゆっくりと片腕をあげる。
そして、彼はゴブリンの拳へと自らの拳を——。
コツンッ。
と、当てる。
瞬間、ガーベは確かに感じた。
ひょっとしたら勘違いかもしれないけれど。
「ガーベ、ハ……ナガマ。オレタチ、ノ、ナガマ」
友達なんてできたことがなかった。
信頼できる仲間ももちろんいない。
思えばガーベの胸には、いつも穴が空いていたように思う——でも、そんな穴が今埋まった気がして。
(胸が暖かい……ゴブリンの拳から、暖かい温もりを感じる)
これが友達。
これが仲間。
「やってやろうぜ。俺たちでリーシャを屈服調教してやろうぜ!!」
「ゲゲゲゲゲゲッ!」
「グゲ! グゲゲ?」
「でもあいつには勝てないって? 安心しろ、俺に策がある」
「グゲ!?」
「あいつは今、村の連中から助けを求められて村に戻ってる。わかるか? 助けを求められるということは、休んでる暇がないってわけだ」
「グゲゲ!」
「その通りだ! やつはお前達との連戦で少なからず疲弊している……倒すなら今なんだ!!」
「グゲェエエエエエエエエエエエエエ!」
雄叫びをあげるゴブリン。
同時、洞窟の奥から出てくる凄まじい量のゴブリン。
ガーベにはわかる。
総力を上げてリーシャを叩く気なのだ。
行ける、これなら行ける。
「行こうぜお前ら! 俺たちの夢をこの手に掴むために!!」
「グゲゲゲゲェエエエエエエエエエエエエエ!」
風を感じる。
勝利の風を……しかも。
『初見です。ゴブリン達に可愛い女の子めちゃくちゃにさせるって本当ですか?』
『ゴブリンと意思疎通してるの凄くね!?』
『この光景をしかるところに見せたら、一気に有名人になれるぞ!!』
『ガーベすげぇえええええええええええ!』
少し目を離したうちにリスナーがめっちゃ増えている。
その数五百人。
前回ほどではないが、どんどん増えていることから可能性を感じる。
これで配信にリーシャを写したら、さらにリスナー増えること間違いなし。
(悔しいがあいつは配信映えするからな)
そしてそして。
そのリーシャの本番となれば、リスナーの数はきっとさらに……。
「ケヒャ! ケヒャヒャヒャヒャ!!」
「グゲ! グゲゲ!」
ガーベとゴブリンは仲良く笑うのだった。
すぐ近くの勝利を夢見て。
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