第四話 リーシャと謎の男

「ケヒャァアアアアアアアアッ!」


 凄まじい雄叫びをあげ、迫ってくる男性。

 リーシャは咄嗟に固有スキル『ジャスティス』を発動させてしまう。


「っ!?」

 

 と、突如大勢を崩す男性。

 きっと、何かしらのスキルを利用して突撃してきていたに違いない。


(リーシャの固有スキル『ジャスティス』は、対象のスキルを無効化します!)


 だから男性は何かしらのスキル——例えば肉体強化系スキルを失いバランスを崩したに違いない。

 などと、そんなにことを考えている間にも。


 ズシャッ!


 と、転がり倒れる男性。

 同時、彼の手からナイフがすっ飛んで来る。


「きやっ!」


 リーシャはナイフを寸前のところで避ける。

 すると、それはリーシャの背後へと飛んでいき。


「グゲッ!」


 聞こえてきたのは魔物の声。

 リーシャが振り返ってみると、そこでは壁に擬態した魔物——ストーンリザードが死んでいた。


 先ほどのナイフに頭を貫かれて。


(え、そんな……まさかこの方、リーシャのことを助けようとしてくれていたのですか? だとしたらリーシャ、なんということを……っ)


 リーシャは咄嗟に先ほどの男性のところへと駆け寄る。

 すると彼は朦朧とした意識の中言ってくる。


「逃げな……と」


「っ!」


 間違いない。

 この男性は今こう言ったのだ。


 逃げないと危ない。


(リーシャのせいでこんな目に遭ってしまったのに、リーシャのことをまだ心配してくれるなんて……ごめんなさい)


 リーシャは気絶してしまった彼のオデコに触れる。

 そして。


「ごめんなさい……でもこの仮は返します! あなた様のことを護ります!」


 この洞窟から無事に脱出し、宿に連れて行って手厚く看病するのだ。

 そして、許してもらえるまで彼の手伝いをしよう。


 苦ではない。

 なんせ。


「あなた様のように立派なお方、初めて出会いました……それにこの髪」


 リーシャやリーシャの父と同じ白銀の髪。

 運命のようなものを感じる——他人とは思えないのだ。


「あなた様はいったい誰なのでしょうか?」

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