第三話 初配信は……

「ガーベ、行きまーすw」


『本当にやるのか?』


『BANされそう』


『美少女の調教配信やってると聞いて』


 リスナーの数はどんどん増えて言っている。

 その数、一万。


 生配信で一万とか快挙だ。

 ガーベ歴だけではない——配信者全体で見ても、生配信で一万人超えはすごいのだ。


(登録者数は……い、一万だと!? この一瞬で……って言うか、リスナー全員チャンネル登録してくれてるってことだよな!?)


 天職見つけたり。

 迷惑系配信者こそ、ガーベッジ・ダストの生きる道。


 これまで以上にやる気が出てきた。

 リーシャ・ブライトを絶対に屈服させ、めちゃくちゃのドロドロにする。

 そして、全てをリスナーに見せるのだ。


 参る。


 ガーベは心の中でそう唱えたのち、固有スキル『竿役』を発動。

 そして、今から倒す相手としてリーシャを強く意識する…….瞬間。


 身体中に駆け巡る暴力的な力。

 全てを知覚できるほどに研ぎ澄まされる感覚。


 この瞬間。

『竿役』の効果により、ガーベは女性に対してのみ最強になった。


 負けはない。

 あとはリーシャを屈服させるのみ。


「ケヒャ!」


 ガーベは地面を蹴って、猛烈なスピードでリーシャへと接近。

 普通ならこのまま、背後に一撃を入れて終わりだった……けれど。


「誰ですか!?」


 リーシャが反応して振り返ってきたのだ。

 駆け出しとはいえ、さすがは勇者ということか。

 だがもう遅い。


「ケヒャァアアアアアアアアッ!」


 狙うはリーシャの胴体。

 峰打ちで体を——。


「っ!?」


 瞬間、ガーベの身体から力が一気に抜ける。

 いったい何が起き——。


「危な……っ!」


 と、思った時には手遅れだった。

 ガーベはずっこけた。

 そしてそのまま地面を転がり。


 カランッ。


 地面に偶然落ちていた剣の持ち手に触ってしまう。

 同時、彼は気がつく。


(あれ、この剣……俺が痺れ薬を痺れ薬シビ、シビビビビビッ)


 やばい。

 いくらなんでも痺れすぎだ。


「逃げな……と」


 逃げないと、意識がなくなる。

 ガーベはそんなことを考えながら、意識を手放すのだった。


『何これ茶番じゃん』


『笑い方なのか掛け声なのか知らんけどキモくね?』


『ケヒャァアアアアアアアア!』


『マジでキモすぎ』


『結局ブライトって本物なの?』


『早く捕まれ犯罪者』


『チャンネル登録解除しました』


『配信者やめろ』


 などなど。

 そんな、アンチどものクソコメントを見ながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る