第一話 初配信は美少女勇者屈服調教

 時は現在。

 場所は街からだいぶ離れた寂れたダンジョン内。


「ウェーイ! ガーベチャンネルのガーベッジ・ダストでーす! 今日は初配信に来てくれて——」


『挨拶キモ』


『食べながら喋ってんの?』


 流れるコメントと共に視聴者がゼロ人になった。

 やばい、さっそく心が折れそうになる。

 だがしかし。


(今に見てろよテメェら。俺はこのチャンネルをでっかくして、テメェらを俺の配信なしじゃ生きていけない中毒者にしてやるからよぉ!!)


 それには継続が大切だ。

 視聴者ゼロだからやる気をなくして、何もしなくなれば来るものも来ない。

 故にガーベはマジックチューブの宙に浮かぶ画面越しに、今はまだ居ないリスナーに向けて語る。


「え、えーと…….はい。今日はね…….迷惑系配信者ガーベの初配信と言うことで…….ね」


 一人で喋るのクッソ気まずっ!

 ダメだやっぱり心が——。


『美少女勇者襲ってけしからんことするってマ?』


 流れてくるコメント。

 視聴者が一人来た——となれば、俄然やる気が出てくる。


「来てくれてありがとうございまーす! 今日は迷惑系配信者ガーベの初配信ということで、将来有望な駆け出し美少女勇者を屈服させて行きたいと思いまーす」


『犯罪じゃん』


『通報しました』


『全裸待機』


 やべぇ。

 リスナー一気に三人になった。

 やっぱり時代は迷惑配信だ。


(視聴者二人が最高記録のダンジョンモンスター討伐配信とか、クソみたいなことしていた時がアホみたいだ)


『ってか、勇者倒せんの?』


『この配信者弱そう』


『草』


 ガーベが色々考えている間にも、言いたい放題のリスナー。

 だが、リスナーが居ないよりはマシだ。

 それにリスナーの疑問は当然だ。


「安心しろお前ら! 俺の固有スキルは最強だ!」


『固有スキル持ちか!?』


『固有スキルって特定の人にしか発現しないレアスキルだよな?』


「そう、俺の固有スキル『竿役』は女性に対してのみ効果を発揮する——その能力は『あらゆる身体能力極限まで解放する』だ!」


『キモいスキルでワロタ』


『レベル関係なく身体能力上がるなら強くね?』


「その通り! 俺のレベルは12だが、固有スキル『竿役』を発動させた時はレベル100と同等の力を出せる!!」


『レベル100って、この世界に魔王しかいないじゃん』


『素のレベル微妙すぎだろ草』


『女の子まだ?』


『この配信釣りかよ』


『早く女出せよ』


 なんか微妙にコメント欄が荒れてきてる気がする。

 だがしかし。


 リスナーめっちゃ増えてる。


 もう十人以上いる。

 まるで夢のようだ。


(このまま荒れさせて、リスナーを失うわけにはいかない! 畳み掛けるなら今だ!)


 と、ガーベはポーチの中から一枚の写真を取り出す。

 そして、彼はそれを画面越しにリスナーへと見せる。


「今日のターゲットはこいつ——銀髪ロングがかわいい駆け出し美少女勇者ことリーシャ・ブライトだ!」


 そしてガーベは今回の趣旨を語っていく。

 それをまとめるとこんな感じだ。


 まずこのダンジョンには、ガーベが倒せない強い魔物や男性の魔物は居ない。

 冒険者に頼んで事前に排除した。


 そして、冒険者ギルドのマスターに賄賂を渡して(ここはだいぶボカした)、ダンジョン周辺の人払いは済ませてある。


 最後に一つ。

 ギルドマスターに頼んで、リーシャ・ブライトのみに偽の依頼を回してもらった(ここもボカした)。


「ノコノコ一人でやってきたリーシャを、ダンジョン深く——叫び声も届かない場所で襲うのが本日の企画だ!!」


『ガチ犯罪やん』


『クソだなこいつ』


 と、どんどん流れてくる批判的なコメント。

 けれど、それに比例してどんどん増えていくリスナー。


(嘘だろ……いつのまにか千人超えてるぞ!?)


 などなど。

 ガーベがそんなことを考えた。

 まさにその瞬間。


「わー、ここがダンジョン!」


 と、聞こえてくる少女の声。

 見れば、ダンジョンの入り口から入ってきたのは本日のターゲット——リーシャだ。

 彼女は緊張した様子で、一人言葉を続けるのだった。


「リーシャの初めてのダンジョン冒険……頑張ります!」

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