第18話 番外編 おみよ
おみよとの出逢いは小学生四年だった。
当時のおみよは、華奢で色白の一重のかわいい女の子だった。
転校生の私は田舎くさい街の人達からは
よそ者扱いされて、友達なんてできなかった。
おみよは同じ商店街の下駄屋の娘。
上にお兄ちゃんがいて少し歳の離れた妹がいた。
同じクラスで分団も同じ。
何となく喋るようになったっけ。
おみよは家の手伝いをして10円や20円を貰たのを貯めてて、毎月、少女漫画のりぼんを買うのを楽しみにしてた。
おみよは本なんか買ってもらえない私に
真っ先に、一緒に見ようって。
公園でふたりで顔をくっつけて
土田よしこのつる姫じゃーを読んだ。
台詞を真似してゲラゲラ笑って。
ある日、おみよんちの猫が赤ちゃんを産んだ。
その中で一番かわいい猫をあげると言う。
私は親にひっしで頼んで、子猫をもらったんだ。
おみよは、猫のご飯の事、トイレは
サラ砂じゃないといけない、ノミがいないか見る方法や潰し方、いろんな事を教えてくれた。
よく、サラ砂探しにバケツを持って、あちこちへ一緒に出掛けた。
5年からはクラスは一度も同じにならなかった。
なんとなく、離れていった。
中学になるとおみよは少し悪っぽい子達と遊ぶようになっていった。
高校は全然違うところだったし、その頃の
おみよは完全にヤンキーになってて
夜遊びばかりしていた。
そんなおみよと再会したのは結婚したから遊びにに来てと共通の友達から誘われたからだ。
当時、おみよは旦那の暴力に疲れ果てていた。
子供にまで暴力を振るうと言ってた。
「どこに逃げてもよ、あの野郎見つけ出すんだよな。執念だよ、全く。
おまけに、今度逃げたら実家に火をつけてやるつうんだ!狂ってんだよぅ。
死なねえかと毎日、便所掃除しながら便所の神様に手を合わせてるんだ!」
とんでもない話なんだけど、笑いが止まらなくてゲラゲラ笑ったっけ。
そのうち昼からベロベロに酔っ払い電話がかかってくるようになった。
それは泣き言で、、。
結局はダンナが事件を起こし刑務所に入ったのをきっかけに離婚ができたけど、、。
実家はお兄さんの家族が住んでいたし、
帰れる訳もなくて、子供二人抱えて
ほとんど働いた事もなかったおみよは
ペルパーとして、本当に一緒懸命働いた。
それなのに長男はぐれてしまい、オレオレサギの手先になったり、あちこち借金しまくり
姿を消した。
おみよは、ずっと息子の健康保険料だけは払ってた。
「もうさ、変な借金取りはきやがるし、裁判所から呼び出しの手紙が来るんだよ。
死んでくれってよ、思うぞ。
だけどよ、時々電話がきてよ。歯が痛いからつうんだよ。仕方ないからさ、保健所送ってやったんだ。」
そんなおみよに55歳の時に出逢いがあった。
相手はバツ2。
優しい人で、何を作って食べさせても
美味しい、美味しいって言うんだ。
その時、私はおみよの手を見た。
細くて、白くて綺麗なおみよの手が
いつの間にか節くれでごつごつの手に変わってた。
おみよは結婚に迷ってた。
住み慣れて友達がいるし結婚してる娘家族がいる場所から関東圏へ行くのは行くのは不安だったんだろ。
私はおみよの手を休まさせてやりたいと思ったから行くことを勧めた。
関東に行ってからは、穏やかな生活だったんだ。大好きな猫を八匹も飼って、酒もタバコも辞めたって。
旦那さんとふたりで刺激なんかなんにもないけどただただ平穏な生活をしてたんだ。
おみよの惚気話はね、私にも、もしかしたら
そんな人との出会いがあるかもしんないって思わせてくれたんだよ。
おみよ、私の大切な大切な友達。
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