第2話 甘々なテスト期間

「雪乃!あんた最近幸せそうじゃない!何が起きたの?」


 私は獅騎くんのことを話した。そしたら


「小説と薄い本にするから!楽しみにしててね!」


 と言われてしまった。そういえば花梨に恋愛の話をするとすぐに小説や薄い本の内容になってしまうのだった。それの犠牲になった人が何人もいたのお思い出し、顔を青くする。


「どうしたの。顔が青いけど」

「いや、ちょっとやばいことしちゃったかも……」


 私はさっきの出来事を獅騎に話した。


「まぁ、仕方ないでしょ?そんなの気にしたってしょうがないし?それに本になったらなったでいいじゃん!」


 よくないけど、獅騎くんがいいならいいや。


「それより雪乃!テスト勉強一緒にしよ!」

「うん、やる!」

「何がわかんない?教えてあげる」

「えっと、社会と英語」

「理系はいける?」

「多分……」

「じゃあ、テスト作ってあげるからやってみようね」


 私はその言葉を聞いてやばいと思った。理科も数学も基本問題は解けても応用問題が解けないから。私は休み時間に必死に勉強してテストに備えた。一緒に勉強するのは放課後だから間に合うはず……


 私はあまり勉強が得意じゃないから家でやらないとできない。正確には授業を寝てしまうから自分で頑張らなくちゃいけない。それで、時間がかかっている。もしくは記憶力がないからやったところを忘れてしまっているのどちらかだ。


 授業も寝ないように頑張りながら、放課後に向けての勉強も頑張るのは大変だ。隣はもうすでに睡眠中でまともに授業を受けていない。授業を受けなくても教科書を読めば理解できるらしい。わからなかったら根気で頑張るらしい。獅騎くんはおサボり多かったからね。私が一緒なら授業受けるとかいってわざわざ隣にして貰ってたし……


 元々テストの点だけは良かったから先生も何も言わなかったけど、授業も出てほしいとかなんとかで仲が良さそうな私に授業に出るように言って欲しいと頼み込んできたのだ。それを獅騎くんに話したら、雪乃の隣なら授業出るとか言い始めて、今の状態に至る。


「雪乃?何考えてるの?ほら、手、止まってるよ?」

「獅騎くんのこと考えてたんだよ?」


 と、わざと言った。そしたら獅騎くんは驚いた顔をして、私を連れ去ろうとする。だけど、勉強しないとやばい私は椅子と机にしがみついていたのだが、さすが男の子、力で負けました。


「なんで抵抗するの?お姫様抱っこの方が良かった?」

「それは嫌!」

「じゃあ、素直についてきて」


 私は仕方なく素直についていく。イケメンで高身長、成績優秀で運動神経抜群の獅騎くんと可愛くもなく、身長もちっちゃい、成績は半分終わっている私が一緒に歩いていると視線が痛いのだ。この視線にはなれないから色々と辛い。


「本当は放課後まで我慢しようと思ったけど、可愛いのが悪いんだから」


 そう言って獅騎くんは私をギュッと抱きしめる。


「はぁ、癒される……ずっと我慢してたからもう限界」


 獅騎くんは私の肩に頭を乗せる。長い髪の毛が首にかかってくすぐったい。ドクン、ドクンと速い鼓動はどちらのものだか分からないけど、私の鼓動はさっきよりも早くなっている。


 サラサラとした髪を触りながら頭を撫でる。触り心地がとても良い。柑橘系の香水の匂いがする。この前とは違う匂いだった。なんか落ち着く匂いがする。


「頭触ってる余裕、無くしてあげる」


 獅騎くんはいきなり私の後頭雨を掴むと、上を向かせて己の唇と私のそれを重ねた。


「ん!」

「ん、おいし」

「な、な、何してんの!」

「何って、キスだけど?言ったよね?頭触る余裕、無くしてあげるって」


 いやいやいや、キスしたってのはわかったよ。なんでしたのかって聞いてるの!私、今のファーストキスなんだよ!それに今の美味しって何!


 私はさっきのキスのせいで腰が抜けてしまった。


「腰抜けちゃった?でも好きだよ。可愛い」

「び、びっくりした」


 獅騎くんは私が1人で立っていられなくなってしまったからお姫様抱っこをして椅子に座らせ、自分は机に座った。


「で、俺の頭触った感想は?」

「さらさらで気持ちよかった」

「ドキドキしなかった?」

「した」

「他には?」

「い、いい匂いした」


 それを聞いたときまた獅騎くんは驚いた顔をした。


「へぇ、この香水好き?」

「う、うん」

「分かった。ねぇ、次の授業サボろ?」

「それはダメ!」

「なんで!」

「ダメなもんはだめ!」


 獅騎は悲しそうな目をしてねだってきたが、花梨と約束したのだ。授業はサボらないって。だからそのお願いは聞けない。そもそも授業をサボる事自体がいけないことだ。


「じゃあ、放課後たっぷり雪乃を堪能するから」

「うぇ?」


 よく分からない約束をさせられたが、とりあえず解放してもらえた。


「雪乃、遅いよ。もっと早く戻ってこなくちゃ。愛しの彼氏くんもいいけど、今回のテストは大丈夫なの?」

「だ、大丈夫じゃないです……」

「尚更ダメじゃない!」

「はい」

「反省してよね」

「わかった……」


 花梨は私のお母さんみたいだ。父子家庭の私には新鮮。


「花梨は雪乃取らないで。これは俺の」

「あらあら仲が良さそうで何より、雪乃その束縛男が嫌になったら私のところに来なさいな」

「あはは」

「雪乃は俺を嫌いにならないから大丈夫だ」

「あら、随分自信があるようで?」

「ああ、自信あるよ」


 そう言って獅騎くんは私の唇に手を当てる。


「ほーら、俺のせいですぐ赤くなる」

「美男美女はいいわぁ」


 花梨が作家モードになった!これはいち早く逃げた者勝ち!と思ったところで丁度予鈴が鳴った。私たちは前を向いて、獅騎くんは私の方を向いて机に突っ伏した。もう寝る気満々……


「寝ないでちょっとは授業受けたら?」

「雪乃を見るのが忙しいから無理」

「……私は見なくていいから黒板見ればいいじゃん!」

「無理」


 私はその言葉になんと答えたらいいのか分からなくなったので、前を向く。するといきなりノートが引っ張られ、持って行かれてしまった。隣を見るとシャープペンを持った獅騎がいた。普段から筆箱を出す事がないので、彼は筆箱を持ってきていないのかと思ったら持っていたらしい。カリカリと何かを書いている。私はそれを見ながら先生の話も聞く、私のノートの隅に書かれたのは男の子と女の子のイラストだった。そして地味に上手い。私はあまり絵が得意じゃないから羨ましい。


「はい」と、渡されたノートには雪乃、獅騎と書かれており、2人は恋人繋ぎをしていた。私はその絵の構図を見ただけで体が熱くなった。熱よ治れ!と念じるものの効果はなく、獅騎くんにまたからかわれてしまう。


「かわいー!こっち向いて。もっといろんな表情の雪乃を知りたいから」

「今はやだ」

「キスするよ?」

「え?授業中だからダメ」

「休み時間ならいいんだね?でもこれで授業最後だからあとは家に帰ってからかな?」

「休み時間もダメ!家も!」


 獅騎くんはまた机に突っ伏してお昼寝モードだ。私の最後の言葉は聞こえてないふりをするつもりだろう。


 そして今日という日の授業が終わり、帰宅時間。本当は掃除をしなくてはならないのだけど、獅騎くんに引っ張られてサボっています。人目を避けて裏門から出るつもりらしいのでまだ誰にも会っていないけど、いつどで誰に出会うかと思うとヒヤヒヤする。


「じゃあ、このままこっちいこっか」


 そう行って連れてこられたのは黒の大きな車が止まっている場所。


「お願いします」

「SIKIさんは今日あっちでいいんですよね」

「あぁ」


 そう言って獅騎くんは車に乗り込む。どこに向かうのかわからない車に乗せられる事30分。


「つきました」

「助かった」


 そう言って獅騎くんは車から降りて、おっきな建物の中に入っていく。とても手慣れた手つきでエレベーターのボタンを押し、乗り込む。


「今日は仕事あるから。ちょっと待ってて。すぐ終わらせてくるから。その間RUNAと話してるといいよ。今日はオフだけどこっちに来てるらしいから」


 私には何の話をしているかさっぱりわからなかった。とにかくよくわからない場所で待つらしい。


 私は連れっれるまま部屋に入って椅子に座る。


「この子は?」

「俺の彼女。雪乃。彼女いるなら連れてこいって言ってたよな?だから連れてきた」

「上鶴雪乃です」

「あぁ、まさかあの性格の悪いSIKIに彼女がいたとはねぇ。それにしてもいい声してるね。雪乃ちゃんも声優さんにならない?」

「雪乃はダメ!俺のだから!」

「えー!そもそもSIKIには聞いてないんだけど……」


 え?声優さん?SIKIってあの有名なSIKI?ってことはさっき言ってたRUNAもあのRUNA?


「あれ?SIKIは雪乃ちゃんに話してなかったの?すごい不思議そうな顔してるけど……」

「し、知らなかったです」

「お前、話してからこいよ!サプライズがすぎるわ!」

「しらねぇ!俺は何も悪いことしてねぇ!」

「雪乃ちゃんが困ってるだろうが!」

「雪乃って気安く呼ぶな。こいつは俺のだ!」


 私は目の前で怒っている獅騎に驚いた。普段はあんなに口が悪いのだろうか?そんな獅騎もかっこいいが……


「全く困っちゃうよね。あの2人いつもああなの。あなた、獅騎くんの彼女さんなんでしょ?手綱握ってあげて」

「る、LUNAさん?」

「そうそう、よく知ってるわねぇ」

「RUNAさんの声好きなんで。それにSIKIさんの声も……」

「あら、知らなかったのね。獅騎をSIKIと知らないで付き合ったの?貴方はある意味すごいわ。あいつは地声で仕事していることの方が多いから結構すぐバレちゃうのよ。元々の声が低いっていうのもあるんだろうけど」


 私はいきなりの有名人の登場に戸惑っていた。


「そろそろ仕事の時間だからあの2人を止めてきてちょうだい。私はもう疲れたの」

「はい」

「獅騎くん、仕事の時間だってRUNAさんが……」

「もうそんな時間か……ちょっとここの部屋で待ってて、あのくそ下田とRUNAがお前と話しててくれると思うから」

「う、うん」


 ある意味気まずい。いきなり来た私はどうしていいか全くわからないし、初対面の人と喋れる方ではないので緊張する。


「ねぇ、雪乃ちゃんはなんで獅騎と付き合ったの?あの子は性格悪いでしょ?」

「性格悪い?ですか?」

「あら、本性知らないの?すっごく口悪いわよ」

「あの、好きとか可愛いとか言われるだけなのでそんなの想像できません」

「こっちからすれば好きとか可愛いって言ってるSIKIを想像できないわ」

「同感だな」

 そして私は質問に答えるような感じで獅騎のことについて話した。獅騎は小さい頃から声優として働いていて、最近やっと名前が上がってきたところらしい。それでも普通の人よりは仕事入っていたから収入は結構あると話された。そして昔の獅騎のことについて話してもらって私は獅騎とスタジオを後にした。

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