第127話 火乃香みたいなJKに突然抱きつかれてよく理性を保ってられるわ
「――じゃあ、キングファーマシーの社長さんがアドバイスしてくれることって、その仕入れ値を下げる方法とかじゃないの」
「うーん、そう簡単にはいかないだろ」
「どうして?」
新進気鋭の調剤薬局、キングファーマシーの社長と経営に関する会談について、俺はどうにも前向きになれず二の足を踏んでいた。そんな俺に
「さっきも言ったけど、医療も商売だからな。特に
「沢山買ってくれる所って?」
「地域展開してるチェーン店とか、総合病院前やモールに構えてる店舗とか」
「じゃあ、ウチみたいな個人店には安く売ってくれないってこと?」
「簡単に言うとな。『足元を見られる』って言い方のが正しいかもしれんけど」
「あ、なるほど」
思う所があるのか、火乃香は難しい顔で「ふぅん」と軽く鼻を鳴らした。
『恐れ入ります、
「後発品?」
『はい。
「んー、確かにそうだけど……」
平静と提案するアイちゃんに対して、俺は口をヘの字に曲げて腕組みした。
「ねぇ兄貴。
「コピー品って言うとアレだけど、昔からある薬の主要成分だけ同じで基材やその他の成分を変えてる
「よく分かんないけど……とりあえず安いんでしょ?」
「まぁ、オリジナルの先発品よりはな」
「でもさ、元の値段が安いなら売り上げは下がるんじゃないの? 100円の薬と1000円の薬だったら、10%の儲けだったら90円も損するじゃん」
「流石に後発品でも、そこまで安くなる薬は少ないけど……もちろん
「??」
またも首を傾げる
「さっき火乃香が例えた通り、1錠あたり1000円の先発品があったとするな。その薬価差率が10%だった場合、ウチは1錠ごとに100円の儲けが出る」
「それは分かる」
「だけど同じ効能の後発品が一錠あたり300円で、【薬価差率】が30%だった場合、一錠仕入れるごとに90円の儲けが出る計算だよな」
「あ、先発品の方が10円儲かる」
「そういうこと。僅差ではあるけど、先発品を仕入れた方が利益が出る場合も多い。とはいえ、もちろん全部の薬がそうじゃないから、アイちゃんの言った通り後発品を仕入れた方が利益が出る店もある。特に卸会社を通さず、メーカーから直接仕入れができる
「じゃあ、全部メーカーから仕入れたら良いじゃん」
あっけらかんと言い放つ火乃香に、俺は眉尻下げて微笑み返した。
「そうしたいのはヤマヤマだけど、先発品全部に後発品があるわけじゃないし、直接仕入れが出来るメーカーは限られるんだ」
「ああ……まあ、それはそうだよね」
「そういうわけで、一番テコ入れの可能性がありそうな仕入れ値すら現実的じゃないのが現状だ。それすら大分グレーな方法だけどな」
「じゃあ、キングファーマシーさんはどんなことを教えてくれるの?」
「それが分かれば、こんなに悩まないよ」
肩を竦めて俺は乾いた笑みを浮かべて返した。
すると何を思ったか、火乃香が突然と俺に抱きついてきた。胸に顔を埋める義妹に一瞬だけ驚くも、俺は彼女の黒く艶やかな髪を撫でて受け入れる。
「だけどさ兄貴。折角だし、いっぺん話だけでも聞いてみたら良いんじゃない?」
「それはそうだな。でも……」
言葉を濁して俺はアイちゃんを見遣った。頭の中では、薬局が乗っ取られそうになったことが思い出されて。
「美味い話には大抵裏がある。たゆね様の紹介だから、ある程度は信用はしてるけど……さっきも言ったように薬局も商売だ。遣り手の社長さんに言いくるめられて、手玉に取られる可能性も少なくない」
「でも、兄貴だって経営者でしょ」
「……どうだろうな」
腕の中で俺を見上げる火乃香に低い声で返せば、義妹は不思議そうに眉根を寄せた。
「俺なんて、
-------【TIPS:泉希の服薬指導メモ】-------
薬価というのは厚生労働省によって定められている薬の価格なので、認可されていない医薬品や国外でのみ流通している薬には薬価は設定されていないわ!
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