第108話 やっぱり湯船に浸かるのは気持ちいいですよね
「――あ~~、疲れた……」
熱い湯船に浸かりながら、俺は大きな声で呟いた。
◇◇◇
さくらの面接を終えた後、閉店業務を片した
「なななんと! アンドロイドとは! では
『厳密にはロボットではありません。
詳細なアイちゃんの説明にさくらは真剣な顔で頷いていたが、「よく分からない事が分かりました!」と笑って言い放った。
「ともかくよろしく御願いします、羽鐘先生!」
『宜しく御願い致します。ところで
「そうですか! まあよく分かりませんが!」
さくらは天真爛漫に、アイちゃんは無表情に、巨乳の凸凹コンビは握手を交わした。何はともあれ、従業員同士が仲良くしてくれるのは嬉しい限りだ。
「じゃあ
「おう。お疲れさん」
「貴方はまだ仕事なの?」
「さくらの入社手続きがあるからな。社労士さんに連絡も入れないとだし」
「そう……じゃあ、お先に」
「明日は日曜だからな。ゆっくり静養しろよ。それからさくら、あんまし泉希に迷惑かけるなよ」
「はい! お任せください!」
自信満々ガッツポーズしてみせるさくらに反して、泉希はゲンナリしている。さくらみたいに騒がしいのが居たら、家でも落ち着かないだろう。
「そういえば、羽鐘さんは今日も片桐さんの家に帰るの?」
『いえ、昨夜はあくまでメンテナンスの為にお伺いしたに過ぎませんので、たゆね様の御自宅に戻る事はありません』
「じゃあアイちゃんはどこで寝るの?」
『無論、所有者である
「「……えっ」」
無表情のまま当然と答えるアイちゃんに、俺と泉希は唖然と間抜けな声を重ねた。
泉希はアイちゃんがウチに来ると知った途端に嫉妬の炎を灯しかけた。だが「ウチには
因みにさくらも「私も先輩の家に泊まりたいのですが!」と勢いよく挙手したが、俺も泉希も華麗にスルーした。
泉希とさくらの退勤を見送り、俺はアイちゃんと二人でさくらの入職手続に掛かる業務に勤しんだ。アイちゃんが手伝ってくれたおかげで予定より早く終わった。本当に有難い限りだ。
「んじゃ、俺達も帰ろうか」
『はい。朝日向店長』
そうしてアイちゃんと二人で帰宅すると、出迎えてくれた火乃香は面食らった顔をした。そんな彼女に経緯を話すと、泉希同様に不貞腐れながら「自分も似たようなモンだし」と投げ槍に呟いた。
「この埋め合わせは必ずするから。なっ?」
艶やかな黒髪を撫でてやると、火乃香は俺と二人で遊びに行くことを条件に出した。食事に行く約束もあるし、その程度なら御安い御用だ。
どうにか機嫌を直してくれた火乃香と共に晩飯をよばれたが、当然とアイちゃんは食事を摂らず直立不動のまま俺達の晩飯風景を見つめていた。
『どうぞ私のことはお気になさらず、ごゆっくり食事をなさって下さい』
そう言われようともやはり居た
『朝日向店長。何か御用命は御座いますか』
「いいよそんなの。仕事じゃないんだし、ゆっくり寛いでよ」
『承知致しました。では御用命あるまで待機モードに移行致します』
言うが早いか、アイちゃんは部屋の端っこでポツンと立ち尽くした。微動だにしないその姿に俺の方が気疲れしそうで、堪らずアイちゃんにマッサージをお願いした。
流石はアイちゃん。天にも昇るような心地良さで思わず寝落ちしかけた。
だが風呂から上がった火乃香に「何してるの」と怪訝な顔をされて、俺は逃げるように慌てて風呂へ飛び込んだ。
◇◇◇
「――あ~~、疲れた……」
熱い湯船に浸かりながら、俺は大きな声で呟いた。
ようやくと一人になれて、心と体の疲労を湯の中に溶かしていた、その直後。
『失礼いたします』
風呂場のドアが勢いよく開かれて、スッポンポンのアイちゃんが現れた。
豊かなその体を隠すどころか、恥じらう事もなく堂々たる仁王立ちで。
-------【TIPS:泉希の服薬指導メモ】-------
肩まで浸かる全身浴は体がよく温まるけれど、心臓に負荷がかかってしまうわ。なのでオヘソくらいの高さの半身浴が理想的な入浴方法よ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます