第105話 借金を返さなければ恋人のおっぱいも揉めない地獄……揉めるほどのモンは無いケド
「――う~~む……」
誰も居ない薬局の受付カウンターで、俺は腕組みしながら低く唸った。悩みの原因はもちろん、借金を返さなければ
もちろんスケベ目的で泉希に告白をしたわけではないが、したいかしたくないかと聞かれればしたいに決まっている!
真面目な泉希のことだから多少は予想していたけれど、まさかここまでエロに抵抗があるとは思わなかった。胸が小さいことでも気にしてンのかな。
「ねえ、
「ひゃいっ!」
突然と声を掛けられ、俺は間抜けに素っ頓狂な声を上げて後ろに倒れた。
「なに遊んでるのよ」
「い、いえ別に」
「ははは」と繕った乾き笑いを浮かべ、俺はのそりと立ち上がる。
「んで、なんか用か泉希」
「用ってほどじゃないんだけど、やっぱり
「一応そのつもりだけど。相変わらず薬剤師は人手不足だし、アイツが記憶喪失になった原因はウチの親父にあるからな」
「そう……まあ、そうようね」
「何か気になることでもあるのか」
「気になるってほどじゃないけど、なんとなく彼女に違和感を覚えたから」
「違和感?」
「彼女、有名な薬科大の出身でしょ。それにしては落ち着きがないというか、雰囲気がちょっとね」
「雰囲気ねぇ……」
確かにさくらの明け透けな性格は聡明な薬剤師って感じじゃないけど、昔の消極的な性格より今の方が楽しそうで良いと思う。
「まあでも、薬剤師にはギャルっぽい女子とかも多いし世の中には色んな人が居るわよね。桜葉さんはもうすぐ来るの?」
「ああ。今日の業務終わりに面接するつもりだから14時には来ると思うぞ……っと、噂をすればなんとやらだ」
見れば表の自動ドアに人影が伺える。患者様という感じではないし、十中八九さくらだろう。まだ約束の時間より大分早いけど。
――コン、コン、コンッ。
電源の落ちた自動ドアがノックされる。俺は「はいはい」と呟きながら手ずからドアを開けた。
「やっほー、店長さん」
だがそこに居たのは、さくらではなくたゆねさん……もとい、我が
「たゆねさん! どうして
「なんだい、私が来ちゃあいけないのかい?」
「いえいえそんな! 滅相もございやせん旦那」
下卑た笑みを浮かべて平身低頭に揉み手をすれば、たゆね様は「クスクス」と上品に微笑まれた。
「私と君の仲じゃないか。そんな壁のある言い方はよしておくれよ」
「いやでも、たゆね様はウチの店のスポンサーですし、俺の借金の債権者様ですし」
「そんな大層なものじゃないよ。そんなことより、今日はこっちが本題なんだ」
口端に笑みを浮かべ、たゆね様は振り返られた。俺と泉希もつられてドアの方へ視線を向けると、自動ドアの向こうにもう一つ人影が見えた。
『ただいま戻りました、朝日向店長』
抑揚の無い挨拶と共に、リクルートスーツに身を包むアイちゃんが入店した。
「アイちゃん!」
「
『はい。たゆね様が早く戻れるよう、夜通し検査をして下さいましたので』
「マジですか! 有難うございます、たゆね様!」
「なぁに、私は機材をオペレーションしただけさ。ただその検査途中に、一箇所だけ気になった部分があってね。事後報告で申し訳ないが、彼女の意向を尊重して勝手に改良させてもらった」
「気になる部分?」
眉を顰めて尋ね返せば、たゆね様はコクリと一つ頷いてアイちゃんに目配せした。
するとアイちゃんも首肯して、ブラウスのボタンを外し徐に服の前を
「っ……!」
露となったその姿に、俺達は思わず息を呑んだ。
-------【TIPS:泉希の服薬指導メモ】-------
一般にお金を貸している側を債権者、お金を借りている側を債務者と言うわ。取り立ての権利を有する側と返済の義務がある側ね。
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