第104話 お付き合い始めたばっかりの電話って何故かニヤニヤしちゃうのに3年もすれば真顔
「もしもし?」
『あ、
「おう、どうした泉希。もう家に着いたのか」
『うん。一応連絡をと思って』
「そうか」
『うん』
「ありがとな、さくらのコト引き受けてくれて」
『仕方ないでしょ。見捨てるわけにもいかないし』
「ははは。さくらはもう寝てるのか?」
『ううん。今お風呂に入ってるわ』
「ん……そうか」
『ちょっと。変な想像してないでしょうね』
「バカ。するわけねーだろ」
嘘だ。本当はちょっとだけ、さくらの入浴シーンを妄想した。
『ねぇ、悠陽』
「なんだ」
『今、一人になれる?』
「一人に?」
『うん。少し、二人だけで話したいの』
「二人だけって……」
電話なのだから既に二人だけの会話だろう。そう思いながらも、俺は「ちょっと電話してくる」とだけ
「外に出たけど、これでいいのか」
『うん。ありがとう』
「それで、話したいことってなんだ」
『う、うん。その……私たちって、今日から恋人になったじゃない? 一応』
「あ、うん」
そういえばそうだった。突然さくらが訪ねてきたから、すっかり忘れていた。
『それで、ちょっと貴方の声が聞きたくなって』
「声てお前、ついさっきまで一緒に
『さっきは皆が一緒に居たじゃない。せっかく恋人になったんだから、二人きりで話したかったの』
「なんだよそれ」
「ははは」と軽妙に笑ってみせるも、俺も満更ではなかった。なんだかこそばゆくて、つい顔がニヤケてしまう。
『ねえ、悠陽』
「なんだ」
『私のこと、好き?』
「ぶふぅっ!」
あまりにも唐突な質問に俺は吹き出してしまった。スピーカーから聞こえる声が普段より甘えた感じなのも俺の
「な、なに言っとるんだお前は!」
『だ、だって心配なんだもん』
「心配ってなにが」
『貴方の周り可愛い子ばっかりだから。ただでさえ羽鐘さんとか火乃香ちゃんが居るのに、今度もまた桜葉さんみたいな美人が来て。おまけに巨乳で』
そりゃお前より小さなお山を探す方が難しかろう。そんなツッコミは心の奥底にキチンと仕舞い、俺はわざとらしい溜息を吐いた。
「お前なぁ、俺が嘘や冗談で告白するとでも思ってんのか」
『そうじゃないけど、貴方誘惑に弱いし。特に美人と巨乳には』
ギクリ。見透かすような泉希の発言に一瞬だけ心臓が縮み上がった。
「たしかに俺は美人と巨乳に弱いかもしれん。それに俺にとって火乃香もアイちゃんも大切なことには違いない。でもそれは家族っていう意味の大切だ。俺の特別はお前だけだ」
『そ、それって……』
少しだけ上擦った泉希の声。俺の心臓はドキドキと静かに加速する。俺は大きく深呼吸してから気持ちを落ち着ける
「好きだよ、泉希」
遠く離れた泉希へ囁きかけるように、俺は精一杯の想いを込めて放った。
『わ、わたっ……! わたしも……好き』
慌てた様子で泉希も尻すぼみに返してくれた。電話の向こうで顔を真っ赤にしているアイツの顔が容易に想像できる。
「なんか恥ずかしいな。照れるわ」
『そ、そうね。こんなこと初めてだし』
「え?」
「え……あ、な、なんでもない! そんなことより悠陽!」
「なんだ」
『分かってると思うけど、エッチなことは当分無しだから』
ピシッ……と、まるで石化したみたく俺はその場に固まってしまった。
「な、なんで!?」
『そういうのはまだ早いでしょ。それに今は薬局が大変なんだし、今はそっちに注力しないと』
「そ、それはそうだけど……逆にドコまでならOKなんだ!」
『どこまでって?』
「一緒に風呂入ったりとか!」
『ダメに決まってるでしょ!』
「じゃあおっぱい揉むのは……いやそれはいいか」
『どういう意味よ! どっちにしろダメだけど!』
「ならチュウは! 口付けは!
『全部同じ意味じゃない!」
呆れたように答えながら、泉希は「んー」と小さく唸って黙考する。
『少なくとも外や人前ではダメ』
ピシッ……と、再び石化してしまった。
外で出来なかったら一体どこでするんだ。俺の家には火乃香が居るし、泉希の家も今はさくらが居候してるんだぞ。
「じゃ、じゃあ『ラブ』の付くお城みたいなホテルで一晩を――」
『良いワケないでしょ! 貴方は一応借金ある状態なんだから。せめて片桐さんに借金を全額返済してからね』
「てことは、借金全額返したら一緒にホテル行ってくれるってことだな!」
『……まあ、そうね』
「っしゃあああああ!」
これはもう、一日も早く借金を返済するよりほかにあるまい。
俺のヤル気が20上がった。
-------【TIPS:泉希の服薬指導メモ】-------
どうでも良い話だけど羽鐘さん>桜葉さん>火乃香ちゃん>私の順番よ。なにがとは言わないけれど。因みに身長は私と火乃香ちゃんが3番目で同率よ。
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