第100話 そろそろサブタイトル考えるの面倒くさくなってきた
「――というわけで、見た目はアレでしたが先輩は御心の優しい善良な男子高校生だったのです!」
あっけらかんと高く笑いながら、さくらは俺の黒歴史を次々と暴露していった。その絶大なダメージに俺はまだ起き上がれそうにない。
「なんだか古臭いドラマみたいね」
「ホントそれ。兄貴だけ時間が平成で止まってる」
呆れた風に言いながら、二人は前のめりにさくらの話を聞き入っていた。その横顔が満足気に見えるのは俺の気のせいだろうか。
「ところで
「はい! 仰る通り
「けど、
「当然です! 私は先輩の恋人なのですから!」
「エッヘン」という声が聞こえそうなほど、さくらは得意満面と胸を張って
「恋人って、どういうこと。兄貴」
「……さくらが勝手に言ってるだけだ」
瞳孔を開き三白眼で睨みつける火乃香に、俺は視線を逸らしながら答えた。そうして視界の端に泉希を見れば、頬を赤らめもじもじと手遊びしている。
「ていうことは、もしかしてストーカー? そういえばさっきの写真も隠し撮りっぽかったけど」
「何を仰るウサ子さん! これは紛うことなき純粋な愛、即ち純愛なのです! それが証拠に他の記憶は全て忘却の彼方に消えようと、先輩とのメモリーだけは思い出すことが出来たのです!」
「……ウサ子さんて、なに?」
得意満面とさくらは笑って答えるも、本気か冗談か分からない火乃香はそれ以上追求することもせず、深い溜息だけを吐いた。
「他のこと全部って貴女、御家族のことは?」
「覚えていません!」
「友達や職場の人のことも?」
「まんじりとも!」
「本当に悠陽のことしか覚えてないの?」
「はい! 頭の中は先輩で一杯です!」
立て続けに繰り出された泉希の質問にも、さくらは即座に答えた。その明るい姿と冗談交じりな言葉のせいで緊張感は全く伺えないが。
「でもさっき『実家を追い出された』って言ってたじゃん。家の住所とか覚えてなかったら、追い出される以前に、帰ることも無理じゃない?」
「そういや、そうだな」
「運転免許証が財布にありましたので! 警察の方が実家に連絡を入れて下さったのです!」
「なるほど……って、警察!?」
「はい!」
にっこりと笑って答えたさくらに俺達は互いの顔を見合わせて、ゴクリと緊張に喉を鳴らした。
「さくら」
「はい!」
「お前、いつから記憶喪失になったんだ?」
「はい! あれはつい先々月のことでした!」
ピンと人差し指を上に立たせて、何故だか自慢げにさくらは話し始めた。
「私が前社に勤め初め1年が経過した頃でした! 私は年次有給休暇を頂戴して、一人フェリー旅行に赴いていたのです!
ですが私の乗り合わせた船の突端でタ〇タニックの真似事をしておられるカップルが居られ、あろうことか足を滑らせ海に落ちてしまったのです! 私は救出を試みたのですが、私も足を滑らせてしまい共々海に落ちてしまったようでして!
そうして病院で気が付いた時には記憶は全て無くなっていました! 幸いにも荷物は無事だったので身分は直ぐに明らかとなりました!」
「以上となります!」と、自信たっぷりと胸を張り口端に笑みを浮かべる。反して俺と火乃香は真っ青に、血の気が引いた顔を伏せていた……。
-------【TIPS:泉希の服薬指導メモ】-------
とうとう100話ね! いつも読んで下さって本当に有難う! 皆様の♡や☆やフォローがとても励みになっているわ! 良ければ今後ともヨロシクね!
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