第29話 予定

 休憩時間中に、隣にいるメルルとお話をする。


 ちなみに噂からか、クラスのみんなも注目している。


 まあ、特に気にしなくて良いかな。


 これでメルルを無視する方が可哀想だし、俺の評判は今更だしね。


「メルル、一昨日はありがとね。妹のマリアが喜んでたよ、また来てくださいって」


「ほ、ほんとですか? えへへ、嬉しいです。では、またお邪魔させてもらいますね」

 ほほ

「うん、そうしてくれると助かるかな。こっちから頼みたいくらいだし」


「そ、そうなんですか? その時は……アレク君もいますか?」


「うん? そりゃ、いるでしょ」


 俺はできるだけ家から出たくないし。

 というか、だらだらしたいので出たくありません!


「そ、そうなんですね」


「あっ、もしかしていない方がいい?」


「い、いえ! いてください!」


「わ、わかった」


 まあ、そりゃ緊張するよなぁ。

 一応、公爵家の家だしね。

 すると、セレナがこちらに向かってくる。


「き、聞いてたわよ」


「うん?」


「私も行っても良いわ……その、マリアとも会ってないし」


「ああ、そうだな。マリアも会いたがってるから来てくれると助かる」


「っ……任せなさい!」


 そう言い、嬉しそうな表情を浮かべた。

 あの二人も仲よかったから、俺のせいで会えなくなるのは可哀想だ。

 メルルもリラックスできるし、こっちとしては渡りに船ってとこかな。






 その後、お昼休みなったので四人で食事を取る。


 女子二人は楽しそうに話しており、俺とトールはそれを聴きながら黙々と飯を食う。


「セレナさん、今日は部活ありますか?」


「ええ、あるわよ。少しずつ人族にも慣れていかないと。というか、メルルも水臭いわ。一昨日、私のことを誘えば良かったのに。もちろん、私も毎回応えられるわけじゃないけど……」


「ご、ごめんなさい。誘って良いのかわからなくて……次からは誘いますっ」


「ふふ、楽しみにしてるわ」


 ウンウン、美少女二人が仲良くしてるのは眺めるだけでもいいね。

 メルルはもちろんだけど、セレナも美人さんだし。

 こう、見てるだけで良いというか……うわぁ、オヤジ臭いセリフ。

 ここら辺も含めて、今の俺はアンバランスな感じがするなぁ。


「そういえば、アレクはどうするんだ? 今日こそ、乗馬に来るか?」


「あぁーでも、運動って感じではないしなぁ。今日のところは、テニス部のところに行くよ」


「あら、そうなの? じゃあ、今日は三人で一緒に行けるわね。そうだ、そのうちアレクの家にもいかないと。もちろん、メルルと一緒に」


「えへへ、賑やかになりそうです」


 ……何か忘れてるような気がする。

 セレナに言わなきゃいけないことが……あっ。


「あっ、それに関して一つ問題が……」


「なによ?」


「お前のんところの親父さん……つまり、国王陛下的には平気なのか? その、元婚約者である俺の家に来ることについて」


「……あっ」


「あっ、じゃないよ。俺は目をつけられるのは嫌だからな。ただでさえ、こっちの立場は悪いんだから」


 そう、これこそが重大である。

 なにせ、婚約解消をしたのはセレナの父親……つまり、国王陛下ってことだ。

 すでに遅いが、これ以上心象が悪くなるのは勘弁である。


「そ、それはそうだけど……どうしたらいいかしら」


「……とりあえず、俺が挨拶に行くよ」


「……えっ? ど、どういうこと?」


「別にどうってことはないさ。うちのマリアが寂しがってるから、遊びに連れてって良いですか?ってね。あと、謝りにでも行こうかと」


 元はと言えば、俺が婚約解消されるような男だったから悪いわけだし。

 だったら、それくらいはしないと。


「そ、そうよね! そうすれば、お父様も許してくれると思うわ……えへへ、もしかしたらそれ以上のことも」


「はい?」


「な、なんでもないわ! とにかく、お父様には私から連絡をしておくから」


「ああ、よろしく頼む」


 さて、あの国王陛下と会うのか。


 今の俺なら、何とかなりそうな気もするが……さて、どうなるやら。


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