第28話 待ち伏せ

学校に着くと、何やら視線を感じる。


道行く生徒達が、俺を見て何やらヒソヒソと話しているようだ。


「なんだ? 俺、何かしたっけ? ……いや、前からこんな感じだったか。もともと、遠巻きに眺められる存在だし……別に良いけどね」


「よっ、何しけたツラしてんだ?」


俺が少し落ち込んでいると、トールが肩を組んできた。


「そうだ! 友よ! お前がいた!」


「はい? なんの話だ?」


「いや、なんか遠巻きに見られてるなぁと思って」


「……ああ、なるほど。そりゃ、そうだろ」


「ん? 何か知ってるの?」


「いや、お前はもっと自分の立場を……まあ、言っても仕方ないか」


ぐぬぬ、解せぬ……何故、呆れられているのだろう。

だが気になる! 悪口だったら泣く!


「知ってたら教えてください!」


「別に対した話じゃない。一昨日、メルルと仲良くデートをしてただろ? その噂というか、見た奴もいるからその話で盛り上がってるんだよ。人の恋路は、最大と娯楽ともいうし」


「はぁー、みんな暇だねぇ。そんな時間があったら昼寝でもしたら良いのに」


「まあ、そう言うなよ。しかも妹連れで家族公認?とかいう話になってるぜ。二人にお揃いの洋服をプレゼントしたとか」


「あぁ……見ようによってはそうなるのか」


しかも、その中に明確な嘘は一つもない。

メルルと出かけたのは事実だし、プレゼントはしてないが選びはしたし。


「そういうことだ。これからは、もう少し気をつけ……いや、お前はそのままでいいか。何かあったら、俺が誤解を解いておく」


「さすがトール! 持つべきものは友達だね! 」


「あだぼうよ、俺とお前の仲じゃ……おっと、ここにも噂を聞きつけた奴が一人」


「ん? どうした……あっ」


振り返ると、そこには鬼の顔をしたセレナがいた。

両腕を組んで、仁王立ちをしている。

どうでも良いけど、おっぱいが乗ってすごいことになってます。


「アレク? どういうことなの?」


「な、なんのことだい? トール! 今こそ出番……いないし!」


「おっと! 用事があったんだったぜ!」


「は、薄情者ぉぉ〜!!」


横にいたトールは、いつのまにか校舎に走っていて……俺を置いて去っていく。

つまり……助けは来ないということだ。


「さあ、説明をしてちょうだい」


「別にセレナには関係ないよ。ただ単に、遊んだだけだし」


「 そ、そりゃ、私は婚約解消してるし……文句は言えないけど……」


な、何故泣きそうになる!?

俺が悪いのか!? いや、多分悪いんだろうけど!

多分、仲間はずれにされたんだと思ってるんだよね?

……ま、まずい! こんなことが親父に知れたら……殺される。


「すまん、お前も誘えば良かったな。ただ、急なことだったから」


「……そうなの?」


「そうそう、だから落ち込むなって。せっかく可愛い顔をしてるんだからさ」


「な、なっ……」


「ほら、早く教室行こう」


「ま、待ちなさいよっ!」


その後、歩きながらセレナに昨日の出来事を説明をする。


「そ、そういうことだったのね」


「そうそう、ただの偶然だったし。次はちゃんと予定を立てていくとするか」


「わ、私もいくわ!」


「ん? 当たり前だろ? 今度はみんなで遊ぶとしよう」


「……そ、そうよね!」


コロコロと表情が変わって、相変わらず面白いやつだなぁ。

だからこそ、飽きずに付き合ってるんだろうけど。


「というか、メルルの件はどう思う?」


「正直いって、難しい問題だわ。獣人に偏見はあるし、どうしていいかわからない部分も多いし。ただメルルは良い子だから、多分慌てなくても良い気がするわ。私たちで、上手く溶け込めるようにすれば……な、何よ?」


「へっ? 何がだ?」


「今、なんで笑っていたのよ?」


どうやら、無意識のうちに笑っていたらしい。


「いいや、セレナは良い女だと思ってな」


「……ふぇ?」


その時、チャイムが鳴る。


「やべっ!? 遅刻するっ!」


「わ、私としたことがっ! あんたのせいよっ!」


「悪かったって!」


俺たちは並んで走り、教室へと急ぐのだった。


ちなみに、ギリギリで間に合わなかった……しかし、何故かセレナだけはおまけ扱いに。


何故だっ!? これが日ごろの行いってやつなのかっ!?


みんな! 日ごろの行いって大事だね!


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