第17話 青春?
……いやいや、たまたまだろ。
もう少し身体を意識して、リラックスしてやろう。
「むぅ〜!! もう一回!」
「ああ、いいぞ」
再び、打球が来るので意識的に打ち返す!
あれ? さっきより、早く打ち返しちゃったぞ?
「ラ、ライジングショット!?」
「あっ、そういうやつだっけ?」
確か、相手の玉がこっちのコートに入った瞬間に返す技だったかな?
よくテニスの王子○とかで見た気がする。
まあ、俺はある意味で王子だから間違ってないねっ! ……別に関係ないか。
「ず、ずるいわよっ! 何処かでこっそり練習してたんでしょ!」
「いや、そんなことしないし。というか、そんな暇があったら寝てるし」
「ぐぬぬっ……私は何年も練習してたのに……うぅー」
あっ、まずい。
そういえば、セレナはめちゃくちゃ負けず嫌いだった。
幼い頃、よく勝負を仕掛けられたっけ。
……そういや、俺と遊んでくれたのはセレナくらいだったな。
まだカエラもいなくて、トールも知り合ってない頃だ。
物心ついた時には婚約者になって、男も女もない頃はよく遊んでいた。
妹も生まれたばかりで……今思うと、セレナがいたから寂しくなかったのかもしれない。
「ったく、相変わらず負けず嫌いだなぁ」
「う、うるさいわねっ!」
「ほら、続きをやろうぜ。セレナの気がすむまでやるから」
「……ほんとに?」
「ああ、昔みたいにな」
「……うんっ!」
そう言うと、子供みたいに笑う。
その姿は、普通の可愛い女の子だった。
その後、加減をしつつラリーをするが……。
俺に余裕が出来たことで、違う意味で余裕がなくなりそう。
「ふふっ、どうしたの? 段々と精彩がなくなってない?」
「い、いやぁ……」
「やっぱり、体力不足だったんじゃない? これからは、練習しないと」
「……ハハ」
確かに体力は、ほとんど残ってない。
ただ、それ以上に困ることがある……おっぱいである。
なまじ打ち返すのに余裕があるので、相手をよく見ることに。
セレナが左右に動き打ち返すたびに、おっぱいが揺れる揺れる。
当然、健全な十六歳男子の俺は……前屈みにならざるを得ない。
「よし——そこっ!」
「うおっ!? ……俺の負けだな」
「やったぁ! ようやく勝てたっ!」
「粘り勝ちってやつだな」
「ふふ、でも手加減しなかった?」
「いいや、手加減はしてない。それだけは嘘じゃない」
事実、俺は嘘を言っていない。
ただちょっと、おっぱいのせいで集中できなかっただけである。
ちなみにそれを察してか、女子達は男子達をコートの近くから追い出していた。
つまり見ていたのは俺だけ……あざます!
「そう? なら良いけど……」
「それより、久々に遊んだな。昔は、こうやって遊んでいたなー」
「さっきのセリフ……覚えてたんだ?」
「そりゃ、あんだけ相手をしてたらな……」
「でも、いつからかしなくなったじゃない」
結局、その後の俺がダラダラしてたからか関係は拗れたが……。
よくよく考えたら、セレナには恩があるんだよな。
……仕方ない、今の俺が礼を返すべきか。
「んじゃ、これからはたまに顔を出してみるかね。まあ、目の前にいる部長さんの許可があればだけど」
「そ、それって……?」
「あとは、メルル次第だけど。さて、俺は疲れたので休むわ」
「ちょっ!? ……もう」
そんな言葉を背にして、メルルのもとに向かう。
「メルル、できそう?」
「はいっ! とっても楽しそうです!」
「それなら良かった。まあ、俺もたまにはやってみるから、良かったら部活に入るのも良いかもね」
「とりあえず、やってみますねっ」
そう言い、ラケットを持って駆けていく。
「ご主人様、お疲れ様でした」
「ほんとだよ、こんなに動いたのはいつ以来だろ」
「ふふ、たまには良いんじゃないですか?」
「まあ……ね」
俺は汚れるのも構わず、草むらの寝転ぶ。
見上げる空は晴れ渡り、心地良い風が吹いている。
うん、青春っぽい……こういうのも、たまには悪くないかもね。
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