第15話 ハーレム?

 余談だが、うちの学校は前の世界でいうところの大学に近い。


 教室の広さやスペース、学食しかり、部活動も多種多様だ。


 何より敷地面積が広く、学校の中に待合馬車があるくらいだ。


 大袈裟ではなく、小さな町くらいには広いかも。


 王都自体が広いのと、王都屈指の高等学園なので可能とされているのだろう。


「いやぁ〜相変わらず広いなぁ。こんなに広いと迷子になりそうだ」


「最初来た時、びっくりしちゃいました。案内人の人がいなかったら、絶対に迷子になってました……」


「アレクはともかく、メルルは仕方ないわね。この王都自体も、相当広いし」


 メルルが驚くのも無理はない。

 獣人国の広さは、うちの国の十分の一程度だ。

 正直言って、この王都だけで獣人の国がすっぽり収まるくらいだし。

 えっ? 俺はどうして迷子になるって? ……方向音痴だからです!

 前の世界でも曲がる道や、乗る電車を間違えていたなぁ。

 何も生まれ変わってまで方向音痴じゃなくても良いのに……とほほ。


「そうなんです。門から学校に行くのに、何時間もかかっちゃって。それに、寮から学校に行くのも大変で」


「あっ、メルルは寮生活なんだ?」


「はいっ、そうです。向こうにある建物で寮生活をして……るんですけど」


 すると、少しだけ暗い顔を浮かべる。

 これは、寮生活で何かあったくさいなぁ。

 あんまり踏み込むのはアレだけど、何かあればフォローくらいはするかね。


「ん? どうかしたの?」


「い、いえ! 何でもないんです!」


「そう? なら良いけど」


「……メルルには随分と優しいのね?」


「そりゃ、そうだろ。メルルは可愛いし」


 僕っ子だし、そのふわふわの耳と尻尾は素晴らしい。

 ケモナーではないが、是非とも触らせて頂きたい。


「ふえっ!? か、可愛いですか?」


「うん、もちろん」


「ちょっと? 元婚約者を前にして、よくもまあ……どうせ、私は可愛くないですよ」


「いや、どっちかというとセレナは可愛いというよりキレイ系だし」


「……へっ? そ、そ、そうよね!」


 すると、耳まで真っ赤になりながら、俺の背中を叩いてくる。

 何故だ!? せっかく褒めたのに!


「だから叩くなって! その癖はどうにかならないのか!」


「う、うるさいわねっ! アンタが悪いんじゃない!」


「あんだと!?」


「えへへ、二人は仲良しさんですねっ」


 その笑顔は、俺達にはとても眩しい。

 まるで、心の中が浄化されるようだ。


「……やめとくか」


「……そうね」


「あれ? ぼ、僕、何かしました?」


「「いいや」」


 こうして、メルルのおかげ?で平和が保たれたのだった。





 待合馬車に乗り、部活動専門の校舎に到着する。

 ちなみにこの校舎は、主に五つの区画に分かれている。

 真ん中に校舎があり、南東に寮、南西に研究所、北東に部活専門広場、北西に商業施設がある。

 その中で俺達は、部活専門広場の一つであるテニスコートにやってきた。

 その近くではバスケやサッカーなども行なっているのが見える。


「……異世界でも変わらないのか……いや、別におかしなことじゃないか」


「なになに? バスケやサッカーに興味あるの?」


「いや、そういうわけじゃないよ。ほら、やるならささっとやるぞ」


「それもそうね。メルル、ルールはわからないわよね?」


「は、はい。球遊びなんかは、僕達もやるんですけど。ボールをぶつけ合って、それが当たったら負けとかっていう遊びです」


 おそらく、ドッチボールのことかな?

 ゲームやテレビのない世界だし、そういう遊びをするしかないもんね。

 トランプや射的とか、古典的な遊びはあるけど。


「それなら、少しは平気ね。とりあえず、着替えながら説明するからついてきて」


「は、はいっ」


「おい、俺は?」


「アンタは、そこにいるカエラに用意して貰えば良いでしょ? まったく、何処からきたんだか」


「へっ? ……おいおい、いつの間に」


 俺の後ろには、いつの間にかカエラが立っていた。

 しかも、その手には白いテニスウェアを持っている。


「セレナ様、お久しぶりでございます。ひとまず、お元気そうで良かったです」


「ええ、とりあえずは。 貴女も、相変わらずって感じね」


「え、えっと? え、エルフさん? でも銀髪……」


 そうだった、忘れがちになるが銀髪のエルフは不吉な象徴扱いされている。

 それは、隣国である獣人族にとっても変わりはないらしい。


「メルル、こいつは俺のメイドであるカエラっていうんだ。銀髪でエルフだけど、俺の大事な家族だ。良かったら、仲良くして欲しい」


「ご主人様……大事な家族だなんて……まだプロポーズも受けてないのに」


「ちょっと? 今、結構良い話をしてるんだけど? 何をヨヨヨとしてるの?」


「ど、どういうことよ! ま、まさか……だから私と婚約解消したの!? べ、別に私はもう一人くらいいても……」


「なんの話だ!? ええいっ! せっかく、良い話をしようとしたのに台無しだよっ!」


「え、えっと……わかりましたっ! アレク君がいうなら……エルフさんがいいなら、僕でも良いのかな……?」


「メルル? ごめん、最後が聞こえなかったんだけど……」


「な、何でもないですっ! そ、それより、いっぱい人がいますぅ」


「……ほんとだね」


 俺達の周りには、いつの間にか周りに生徒達が集まっていた。


「お、おい……セレナ様にエルフに獣人までいるぞ」


「婚約解消したのは、ハーレムを作るためだったのかな?」


「アレク様、少しはやる気になったって話だったけど……そっちも?」


「これは、面白くなってきたぜ」


 遠巻きにしながら、そんな会話をしている。


 多分、とんでもない誤解を受けているような気がする。


 ……どうしてこうなったァァァ!

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