第14話 部活やアルバイト

 結局、お昼ご飯を食べた後も、俺は満腹からかうとうとしてしまった。


 辛うじて居眠りは避けたが、午後の授業内容は全く覚えていない。


 結局、今日は何しにきたのかわからん。


「どうしてこうなった!?」


「おっ、元気になったな?」


「放課後だけ元気になってもなぁ。俺は部活やバイトもしてないし」


  どこの世界でも学生というのは変わらないらしい。

 あるものは部活に励み、あるものはバイトをする。

 というか、本当に日常生活に支障がない……変な話だが、考えても仕方ないか。

 多分だが、種族と精霊術以外は変わり……いや、があるか。


「もったいない話だよなー」


「だって面倒だし。トールはこれから部活?」


「おう、今日もバニーちゃんと走ってくるぜ」


「相変わらず、馬が好きなこと」


 トールの部活は乗馬部だ。

 基本的に、前の世界にありそうな部活はほとんどある。

 その他には、実際の武器を扱う部活がいくつかあったり。

 あとは変わり種の部活があるくらいか。

 ちなみに、俺は部活には入っていない……ダラダラしたかったから。


「ああ、好きだぜ。ったく、お前も誘ったのによ……今からでもやるか? どうやら、心境の変化があるみたいだが?」


「うーん……まあ、そうだね。一応、考えておくよ」


 すると、隣で帰り支度をしていたメルルが視線を向けてくる。


「メルル、どうかした?」


「あ、あの! 僕も、部活に入った方がいいですか?」


「あぁー、その辺はどうなんだ?」


「そうだね……」


 最近まで、人族は他種族との交流は断交していた。

 お互いが、あまり良い感情を持っていなかったから。

 交流が再開されたのも、今の国王陛下の代からだし。

 何人かの獣人族が我が国にきたが、王都にある学園においてメルルは唯一の獣人族だ。

 そして、その役目は人族の暮らしを知ることらしい。


「な、何かまずいですか?」


「いや、それ自体はいいと思う。ただ……悲しいことに、受け入れてくれるところがあるか」


「あっ……そ、そうですよね。僕、獣人ですもんね」


「まだみんな慣れてないからね。俺達は立場上、見たことあるから平気だけど」


「パーティー会場なんかでは、たまに獣人のお偉いさんが来たりするしな」


 王族や高位貴族の子息なら、多分触れる機会はあるはず。

 まあ……それと好きか嫌いは別問題だけど。


「じゃあ、やめた方が良いですか?」


「いや、入りたいなら良いと思う。ただ、急ぐ必要はないかなって。別にアルバイトとかでもいいし」


「アルバイト……お金を稼ぐってことですか?」


「うん、そういうこと。多分、人族を知るなら勉強になると思う」


「確かにそうですね……はい、少し考えてみます」


 すると、他の生徒に挨拶を終えたセレナが近づいてきた。


「聞いてたわよ! なら、私と同じ部活に入ると良いわ! なんなら、アレクも入って良いわよ!?」


「入らないし。というか、声がでかい」


「むぅ……入ってくれたっていいじゃない……メルルはどう? 別に毎日じゃないし、アルバイトもできるわよ?」


「えっと、あの……」


「あんな陽キャラだらけのところに行けるか。ちなみに、こいつの部活はテニス部だよ。ラケットを持って、ボールを相手に打ち返す競技だね」


 所属している人間は、間違いなくカースト上位勢。

 ウェーイ系が集まる、陰キャラの敵だ。

 おのれ……昔は卓球部と仲のいい陰キャラ寄りのスポーツだったのに!

 剣道部だった俺らとも仲が良かったのに! いつのまにかお洒落スポーツになりおって!


「陽キャラ? なんのことよ?」


「あっ……明るい奴らのことだよ。俺みたいな暗くて地味な人間には合わない場所だ」


「いやいや、王位継承権第二位が地味とかないから。お前の黒髪黒目は、この世界で数人しかいないんだからな?」


「そうよ。というか……それだと、私と合わないってことにならない?」


「そうだが?」


「どういうことよ!?」


「揺らすなって!」


 お前が俺を揺らすと、目の前でお前のおっぱいが揺れるんだよ!

 おぉぉぉー! すげぇ〜! ……じゃねえし!


「えへへ、でも楽しそうです。僕、身体を動かすのは好きだから」


「あら? なら、お試しでやってみる? アレク、あんたも付き合いなさいよ」


「えぇ〜俺は用事あるから良いや」


 心を入れ替えると決めた俺だが、それとこれとは話が別である。

 ダラダラしたいのは、未だに変わっていないし。

 あくまでも、周りから責められない程度にやることをやるだけだ。


「部活もアルバイトもないアンタに用なんかあるの? というか、トール以外に友達もいないのに?」


「ぐぬぬっ……あっ、そうだった! トールの乗馬部を見にいこうと——いないし!」


「あ、あの……トール君なら、今さっき教室から出て行きましたよ? なんか、さらば親友よとか言ってました」


 あの裏切り者めぇぇ! ぼっちの俺を置いていきやがった!


「はい、決まりね。じゃあ、早速いくわよ。体力がないって言ってたし、ちょうど良い機会じゃないの」


「待て待て! 引っ張るなっ!」


「そもそも、アンタは世話役でしょ? メルルが見学するなら、ついてこないとダメじゃない」


「あぁー……それは確かに」


「ぼ、僕は別に、平気ですから。そりゃ……ついてきてくれたら嬉しいですけど」


「……わかったよ、ついていくよ。メルルのためじゃ仕方ない」


「わぁ……ありがとうございます!」


「むぅ……扱いに差があるわ」


「当たり前だろ。ほら、行くなら行こう」


 はぁ……部活かぁ。


 しかし、体力不足なのは確かだ。


 とりあえず、やるだけやってみますか。
















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