第13話 深刻な体力不足
気、別名チャクラとも呼ばれる——それは弱い人族に与えられた力と言われている。
エルフには精霊術、竜人族には竜化、獣人には持って生まれた特殊な身体能力が備わる。
生身だと弱い人族が、それに対抗するために編み出した術だとかなんだとか。
まあ、詳しいことはわからない……多分、そんな感じ……知らんけど。
わかることは気は体力を消耗するということ、人族でも使える者は限られてることくらいだ。
「以上が説明となります」
「誰に言っているのですか?」
「なんでもないよ! というか、相変わらず速いな!」
俺の時速は、おそらく六十キロは出ている。
人に当たると危ないので、壁の上や木の上などを利用して移動してるが……。
そんな中、カエラは脚に風をまとい並走していた。
「ふふ、まだまだご主人様には負けませんよ。こっちが、私の本業ですから。それにしても、懐かしいですね? 最近は、こういうのもなかったですし」
「そういや、よく鬼ごっこしたっけなぁ」
「あれは怖かったですねー。旦那様ってば、めちゃくちゃ怖い顔して追ってきましたし」
「ほんとそれ。あの人、見た目が怖すぎるんよ」
うちの父親はかなり厳ついからなぁ……見ず知らずの子供が泣き出すくらいだし。
父親がまだよく帰ってきた頃、カエラの訓練を兼ねて街中で鬼ごっこをしていたなぁ。
その時は、二人して父親に追いかけ回されたっけ。
「また旦那様が帰ってきたらやりますか?」
「うげっ、勘弁してくれ。というか、俺はできれば会いたくない」
「そんなこと言っては可哀想ですよー。旦那様ってば、ご主人様のことが可愛いんですから」
「はたして……あれは可愛がっていると言って良いのか?」
出会い頭に斬りかかり、嫡男を殺しそうな人だぞ?
俺はいつも、逃げるのに必死だった気がする。
なのに、マリアには激甘だし……世の中は不公平である。
そんな会話をしつつ、どうにかチャイムが鳴る前に到着できた。
「ま、間に合ったか」
「あらら、鈍ってるんじゃないですか? 以前のご主人様なら、これくらいじゃへばらなかったのに」
「ほ、ほっとけ……やばっ、くらくらする」
「どうします? 今から休みます? 良いところ行きます?」
「休まないし、良いところもいかないよっ! というか、体力を使わせないでくれ……」
「はいはい、わかりましたよー。それでは、私はこれで」
「ああ、行ってくる」
俺は重たい脚を動かし、何とか教室に向かうのだった。
そして、ギリギリで滑り込みセーフとなる。
俺が扉を開けた瞬間に、チャイムが鳴り終わった。
「あ、あぶねぇ」
「お、おはようございます!」
「メルル、おはよう……君は朝から元気そうだね」
「えへへ、元気くらいしか取り柄がないんです」
「いや、良いことだよ。それじゃあ、今日もよろしくね」
「はいっ、頑張ります。きちんと授業受けて、この国のことを知っていきます」
そう言い、両手の拳を握ってフンスフンスしている。
まだ二日目なのに、やる気があって偉いなぁ。
これは、少しは俺も見習っていかないと。
……と思っていたのにいぃぃ!! 気がついたらお昼休みになってるじゃん!
授業受けてないじゃん! 来た意味ないじゃん! 心象良くないじゃん!
「どうしてこうなった!?」
「いや、当然じゃね? あの様子から、チャクラを使ってきたんだろうし。というか、寝すぎじゃね?」
「え、えっと……僕、頑張って起こしたんですけど」
「メルルが謝ることないわ。どう考えてもこいつが悪いわよ。まさか、一限目の授業からひたすら眠り続けるなんて。やっぱり、昨日のあんたは幻だったのかしら?」
「ぐぬぬっ……おのれぇぇ」
しまった、いくらなんでも体力がなさすぎる。
まあ、怠惰な生活を送っていたから無理もないが。
これからは、少しトレーニングでもしないといけないかも……はぁ、めんどい。
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