第4話 これは……贅沢だ。
あたしたちがいる砂浜の
昔からやりたかったことが、ついに今叶った。
「「海だーー!」」
日々のストレスの
この
この
もう、なにをしても
砂の感触がたまらない。なんというか、こう……天然の足つぼみたいな。きめ細かい砂はペダルを漕いで疲れた足の裏によく効く。
太平洋に繋がっていて、
「うわっ冷たっ」
鮮やかな青と透明な空色。グラデーションがとてもきれい。
バシャバシャと波を踏む。
「えいっ」
みふゆちゃんに海水を掛ける。
「ちょっ、ちょっと、服が汚れちゃうでしょ!」
本気で嫌がってる様子ではなくて、ホッとした。
みふゆちゃんは少し屈んで、「仕返し!」と言いながら海水をかけられた。
腕で顔にかかるのを避けたけれど、避けきれず顔にかかった。
「しょっぱ! 口に入った!」
海水の味は
こんな水遊びで、周りを忘れるほど遊んだのはいつぶりだろう?
考える暇もなくて、今みふゆちゃんと遊ぶのに精一杯で。
目が合うたび、にやけてしまう。
「そういえば、海の家! やってるかな?」
急いで思いだしたようにみふゆちゃんがあたしに言う。
「あっそうだったね! あっちに建物はあるっぽい。確認しに行こっ」
「ここだね」
海の家の木々は灰色にまで色が落ち、テラスは年季を感じられる。
テラス席右側の角には、〝本日最終日〟という垂れ幕がかかっていた。
おまけに、〝本日最終日の為、シーフードBBQ全品半額〟という嬉しい文字も。
「BBQ! BBQ! 半額だって! これは行くしかないっ」
「ちょっ、ちょっと
全力で海の家に走っていった。
☆★☆
目の前には、ホタテ、エビ、イカ、タコ、アジの干物、
「これは……
持てるお金をほぼ使って、頼んだもの。
「こんなに、食べきれるの?」
みふゆちゃんは心配した様子であたしに問いかけた。無理もないと思う。
あたしも勢い任せだったし。
まあ、でも。
「二人で食べきるのっ。
結構悩んでいたようで数秒後「これにする」と言いながら指さした。
おお、いいね。ちょうど二つで一緒に食べれる。
「私は、ホタテから食べたい」
「じゃあ、あたしもホタテたーべよ。ホタテってホント美味しいよね」
炭火の網の上へ乗せる。
しばらくすると、ホタテの貝に乗っていた栄養がグッと詰まった
出汁が炭へと
グツグツ煮えたぎっているホタテに一周醤油をかける。香ばしい匂いが私たちの
食べごろになったようなので、
お
「んまぁ~! これが半額なのは運がホントよかった!」
「おいしっ。この
みふゆちゃんの
目も下がっていて本当においしそうだった。
秒で食べてしまい、次に何を焼こうか
もう無限ループで、止まらない。
やっぱり定番のイカかな……。いや、
「
かなり迷った末、決めた。
「イカ! イカにするっ」
見るからに肉厚で色も白い。これはおいしくないわけがない!
「本気焼きじゃ~!」
お皿に乗っていたイカをトングで掴み、網の上へ並べる。
イカから
しばらくして焼けたそれを、そのまま
「天国すぎる! 二人で食べるとこんなにおいしいんだね!」
「今日、ホントに連絡着いてよかったよ。今までで最高の一日」
「そんな大げさな~。私も今までで一番楽しいって思ってる」
二人で笑いあって、そのあとは一心不乱に目の前にある食材にしがみついた。
☆★☆
「ふう~食べた食べた!」
「私もお腹いっぱい。もう食べれない」
寝そべるように上半身を机に伸ばす。お腹が限界だった。
喉が渇いたのでコップ一杯の水を飲み、お口のリセットをはかる。
時刻は夕方。若干日が落ちていて刺さるような暑さは和らぎ、火照った体を潮風が冷ます。
オレンジ色の西日が目に刺さるように入って眩しい。
どうやら日は一度傾くと、それ以降スピードを上げて暗くなるようだ。
「次はどうする?」
「花火やろうよ。家で」
プランはもうすでに組んでいる。
売店寄ったときに、手持ち花火を一応二セット買っておいた。
「もう夕方だけど、これから美玲のお家行っても大丈夫なの? 親とかいるんじゃないの?」
斜めに顔を傾けて私を見た。その拍子に艶々の黒髪が顔の横になぞるようにスルッと垂れる。
その瞬間ああ、なんて可愛いんだろうって思った。
「私は問題ないよ。今日親仕事で夜中までいないし。むしろみふゆちゃんは? 大丈夫?」
「こっちも特に問題ないよ」
「よしっ、じゃあ決まりだね」
そのあと、みふゆちゃんは一度着替えたいと言っていたため、あたしたちは、一度自宅に戻ることにした。
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