第六章 辺境の島に国を作る
第47話 王子、復興する
家があった場所に戻ると、前よりも数倍は開けた土地になっていた。小さな村よりもひょっとしたらでかいのかもしれない。
何もないところを見て落ち込むのかと思ったが、みんなはすぐに動き出した。気持ちを切り替えたのだろう。
「私は何をしたらいいですか?」
メアリーに島に残るのか聞いたら即答で"うん"と言っていた。そもそも帰るための手段もないため、しばらくはここにいないといけないらしい。
やはりそういうところは似ているのだろう。僕も島を間違えて帰る手段を考えていなかった。
メアリーには手を叩いて、アースドラゴンを誘導してもらう役目をお願いした。手を叩いて音が鳴るのは、僕とメアリーしかいない。
「ヒツジこれぐらいならどうだ?」
『おいおい、冗談言わせんなよ! アドルが住む城をそんなに小さくしたらダメだろ?』
「別々のところで生活するなら尚更――」
『えっ…….ワシ達一緒に寝ないのか?』
勝手に王にさせられた僕が一人で寝る場所があれば良いと思っていた。だが、ヒツジ達は僕が王になっても変わらず、一緒に生活を共にするつもりだったらしい。
王と言ってもただの村長のような扱いなんだろう。それなら気軽に引き受けても良さそうだ。
僕が返事をしないからか、ヒツジは尻尾を僕に巻き付けていた。今日もヒツジのツンデレは健在だ。
「せっかくだからみんな一緒に寝ようか」
『いや、さすがにそれは無理があるぞ』
これはツンとしているのか、事実を言っているのかどちらだろう。すぐにツンツンするから中々難しい。
とりあえず、カマバックが家の中に入ることを考えると、住んでいた城より大きくする必要が出てくる。
カマバックはとんでもないぐらい脚が長いのだ。
住んでいた城よりも大きな家を建てる場所を確保する。ただ、部屋数はそんなに作らず、生活に困らない程度にするつもりだ。
リザードマンは海岸で石灰石を拾ってきて、焼き鳥を中心にフェニックス達が粉々にしてセメントを作っている。
『それ吾輩の得意分野だぞ!』
どこかコボスケの話し方に影響されているのは、弟子のコカスケだ。コカスケは尻尾をセメントに向けると、キラリと目が光った。
少しずつセメントは固まっているようだ。
そういえば、コカトリスの尻尾である蛇は石化させる能力を持っている。ひょっとしたら前よりもしっかりした家が建てられるかもしれない。
『おーい、アドルゥー!』
作業が落ち着いてくると、コボスケに呼ばれた。何かを一生懸命引っ張っているのか、体が後ろに倒れそうだ。
「お前どこに行ってたんだ?」
リザードマンの池を掘り終わったら、コボスケはどこかに行っていた。
戻ってきたと思ったら、大きな木を引っ張っている。
『世界樹を持ってきたぞ!』
「世界樹!?」
僕達は急いでコボスケの元へ向かうが、確かにその大きさに驚く。
『ほほほ、年寄りも長生きしてみるもんだな』
世界樹って会話をするのだろうか?
確かに大きな木ではあるが、世界樹ではないような気がしてきた。
それはメアリーも思っているのだろう。
「ねぇ、お兄様?」
「どうした?」
「あれってエルダートレントじゃないかしら?」
どうやら世界樹だと思って連れてきたのは、エルダートレントというトレント種で最上位の魔物だった。
───────────────────
【あとがき】
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