第46話 王子、復興を決意する
「おーい、帰ってきた……ぞ?」
僕達はメアリー達のいる場所まで戻ると、見たこともない物に驚いた。
「お兄ちゃんおかえりー!」
メアリーは寝ていると思ったが、糸で編み込まれた斜面の上を勢いよく滑る遊具で遊んでいた。
『あら、アドルきゅんおかえり!』
「これはどういう状況?」
木に寝床を作っているところから偶然発見した遊び方だ。上の方から斜めに傾斜をつけることで、風を感じながら遊べることに気づいたらしい。
ツルツルと滑りながらメアリーが上から降りてきた。
「カマちゃんが遊んでくれてたの」
やはり心配で休めなかったのか、それまで気分転換をしていたらしい。
「私が全て壊してごめんなさい」
『ああ』
メアリーは必死にヒツジに謝っていた。今となってはヒツジも特に気にしていない。
ツンツンしているのは通常と変わりない。
「これからも魔法のコントロールがうまくできるように――」
『ワシが教えてやる』
「へっ?」
『だからワシが魔法を教えてやるって言ってるんだ!』
ヒツジは確かに魔法のコントロールが一際上手だ。生活の一部に魔法を使っているからか、普段から家財を作っている時は、同時に作業をしながら何種類かの魔法を使っている。
ツンデレヒツジは素直に助けてあげると言えないのだろう。
「へへへ、私に魔法のお師匠様ができた」
メアリーは小さい時から魔法の才能が開花していた。そのため、レベルが高いメアリーに魔法を教えてくれる教師はおらず全て独学で勉強していた。
唯一教えてくれたのは兄のアーサーぐらいだった。
その時に使えるようになったのが闇属性魔法。教えることのできる人がいないからこそ、コントロールが必要になるのだろう。
「あれ? ヒツジって何の魔法が使えるんだ?」
『言ってなかったか? ワシは全属性使えるぞ』
ああ、こいつはヒツジという名前だが、本当は白虎だった。
魔法は基本の属性として、火・水・土・風が存在し、大体はこの属性の中で数種類使えるようになる。
珍しい属性として闇・光があり、基本属性の上位に炎・氷・木・雷で計十種類あると言われている。
火の属性に特化している人が炎も使えるようになるってことだ。
闇と光属性にも上位魔法があるのではないかと研究されているが、そもそも闇と光属性を使える人が少ないからわからないらしい。
ちなみに魔法省で働くアーサーは闇と光以外使えるというとんでもない兄だ。
しかも、その魔法を使わずに生活を楽にできるように研究している。
彼は魔法だけに頼る生き方はしたくないと言っていた。
本当に僕だけ何も才能がないことがすぐにわかるほどだ。
「さっきコボスケとヒツジで話し合ったけど、せっかく開いた土地ができたなら、また大きな家を建てないか?」
反対するものは誰一人おらず、賛成しているようだ。ちょうど木材の確保もすでに済んでいる。
『アドルはすぐに友達を増やすからね』
その言い方だと友達が多い人みたいじゃないか。僕にはここにいるやつらしか友達はいない。
いつ仲間が増えるかわからない状況のため、大きな家で問題はないらしい。
「この際、ここに国を作っちゃえば良いんじゃないの?」
メアリーの言葉にみんなの目が合う。国ってあの国のことを言っているのだろうか。
そもそも国って簡単に作れるものではない。
「だってカマちゃんのこの糸一つ見ても、すごく高級品だよ?」
確かにカマバックの服は着心地が良い。さらさらして手触りも最高だ。
「それに私がいるからお兄様よりは、女性については詳しいはずだよ」
うん、それは一理ある。女性のことなんて何も知らないからな。
話しかけても逃げていかなかったのは、カンチーガイ伯爵令嬢だけだった。
それだけ僕は同世代の女性に嫌われていた。
「じゃあ、次の目標は国を作ることで決定だね!」
『もちろん王様は?』
『アドルー!』
みんなの声が森の中に響いた。どうやら僕はこの島の王様になるらしい。
あれ?
そういえば、メアリーはこの島に残るのだろうか。
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【あとがき】
第五章はこれで終わりです!
せっかく整えた衣食住を全て破壊しました笑
次は建国?編になります(*´꒳`*)
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