第2話
確認も済んだし、そろそろ避難でもするか。
やべぇ、こんな状況だからなのかわかんないけど戦闘欲が湧いてきた。外にうじゃうじゃ湧いてるゴブリンのことなんて全くわからないから死ぬかもしれないのに。
俺はそこそこ欲望に忠実だからな。積極に戦うことはしないし積極的に逃げることもしないさ。
つまり!なるようになれ!
それじゃあ、ステータスボードを1mの長さの角材のような形に加工して出発だ。材質はアルミから変えていない。
外に出てまず気がつくことがある。空気汚すぎるだろ。臭いぞ。
具体的に何の匂いかと聞かれるとわからないが。
これが魔力の匂いとでもいうのだろうか。
家から出発して100mくらいは歩いたと思う。
人の海、化け物の海を潜り抜けて進んできた。
やっと開けた場所に来れたと思ったら地面に人々が倒れている。ゴブリンらもそうだ。
一体を除き。
身長はあまり高くなくゴリラのような見た目だ。ゴブリンの面影もある。明らかに強い。強者も風格がある。周りに漂う空気に色がついて見える。
何なんだこいつは!?地面に倒れているものを全員殺したというのか!?
恐怖と興奮でおかしくなりそうだ。
「逃げるという選択肢なんて存在しない!初戦大勝利といこうか!」
全力で走って距離を詰め、ステータスボードでぶん殴る。
ゴリラゴブリンは何もしてこない。呼吸を整えているみたいだ。
「随分余裕がありますねぇ。畜生がよぉ!」
またステータスボードでぶん殴る。ぶん殴る。ぶん殴る。ぶん殴る。
大したダメージは受けてないみたいだ。何かがおかしい。
攻撃してこないのもおかしいし、ダメージを受けてなさそうなのもおかしい。
あ、スキルか!?呪文かもしれない。
呼吸が整っている間は防御力が爆上がりとかそういうやつか?
疑問が次々に湧き上がる。なぜ勝てない。考えろ、考え続けるんだ。
攻撃の手段を変えてみるか。
「【マジックダーツ】!ターゲット設定」
俺の掌に金色のダーツが現れる。
ゴリラゴブリンの心臓辺りにターゲットを設定する。
魂の一投。
「これでも食らえクソザルゥ!」
投げたダーツは見事ターゲットに命中した。
なぜか身体があったかい。力が漲ってきた!
そんな俺の様子とは違いゴリラゴブリンは呼吸を乱し苦しんでいるようだ。
今がチャンスだ!
ゴリラゴブリンが何か叫んでいるが関係ない。
超高速でステータスボードを飛ばす。
ステータスボードがゴリラゴブリンの胸を貫く。
勝ったな。
いや、ちょっと待てゴリラゴブリンから出た血液が集まって拳の形になっている。数は四つだ。しかも全てが俺の顔面めがけて飛んでくる。
ステータスボードを飛ばすのに魔力をかなり消費したからもうステータスボードを
俺の手の元に戻すことはできない。そうしたら本当に限界が来る。
本当に死亡フラグってあるのかよ。せっかくローファンタジーの世界になったのに死にたくねぇよ。
「でもなぁ、主人公補正ってもんがあるんだよ」
死にそうになっても死なないそれが主人公ってもんだ。そして俺は主人公だこんな最序盤では死なない。死ねない。
ゲーム風に堅い表現で言うと俺の勝利条件は逃げ続けて出血死させること。ただし電車並の速度で追ってくる血の拳があるこことする。か?
「やったらぁ!」
受け流す。
受け流す。
受け流す。
避ける。
もうそろそろ体力的にキツくなってきたから避難所に向かおう。もちろん血の拳はついてくる。
途中でステータスボードを回収してまた加速する。
避難所の小学校が見えてきた。そして血の拳は無くなっていた。俺の勝利だ。やっぱり俺は主人公だ。
そんなことを考えて避難所に入る。
あ…体に力が…入らない。
☆☆☆☆☆
「さっきの映像見てたけどやっぱり沢城やばすぎない!?ほんとに人間?怖いわ。一人でなんか叫んでんのは少し痛かったけど」
やや茶髪で小柄な少年は言う。
「当たり前でしょ。私が目をつけてる男だし、天才はどんな環境でも天才なのよ」
やや茶髪で小柄な少女は返す。
二人が話していた場所はテレビもモニターもない体育館だった。
元天才のわるあがき!~ローファン世界でその他一般人にランクダウンされかけた青年はどう成り上がるか?~ わっしゃ @kekekn
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