[19時31分 車内 ―殺し屋―]
『目標が校内に入った』
「かしこまりました。では、仕事に――」
『その前に伝えておくことがある。どうやら、夜の学校だというのに、目標以外の人間が複数いるらしい』
おやおや、それはそれは、と車の運転席で電話を受けた男は笑った。
「して、どうしろと?」
『俺は、貴様が「仕事」をする上で有用と思われる事実を伝えたまでだ。依頼の内容は変わらん。指定した三人を殺せば貴様の口座に残りの金が振り込まれる。その過程で貴様が誰かに殺害現場を見られようが、その口封じのために無関係の人間を殺そうが、振りこまれる金は変わらん』
電話が切れた。
なるほど、と呟くとアラタという名で仕事を行っている男は停めた車から降りた。車はごく平凡なもの。車に興味がある人間だとしても、わざわざ記憶にとどめたりはしないだろう。
その一方で、そこから降りた男は異彩を放っていた。
白一色で統一されたスーツに、白いシャツと白いネクタイ。あまりの派手さに、服装以外の印象が全てかき消される。
両脇に吊るした銃を確認するように軽くそこを叩くと、男は「砂糖」の取引現場へと向かった。
そこに来るものと交渉するためではない。
そこに現れるものを殺すために。
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