51.バーサーカー
落ちていきそうな思考を振り払って女子陣に視線を戻すと、穏やかな笑顔を沙月と結季ちゃんが見せて空ちゃんと接している。
空ちゃんが一瞬で生徒会に馴染んでいる姿は、相変わらずだなと懐かしくなる。
結季ちゃんは壁を作るようには見えないけど、はたから見ると絶壁が立ちはだかっている沙月の懐にも既に入っているように見える。
生来の陽キャには近づきにくそうなんてことで尻込みしないのだろう。
昔から初対面の相手でもすぐに打ち解けていたし、たった一年だけど変わらないな。
「お二人は日郷先輩が来る前から仲良しなんだったんですか?」
「あー……ううん。樽見さんとはこんな風に話すようになったのは最近かな」
「そうね」
「怖かったもん」
「そう、え……?」
「まあ雰囲気ありますしね……でも内部ってことは中学も一緒ですよね?」
「うん。でも同じクラスにならなかったし、遠目で見かけた時にクールで美人さんで住む世界が違うんだろうなってぼんやり思ってたくらい」
「へぇ……」
「だから日郷さんも高科さんもこんなにすぐ打ち解けられるのはすごいと思うよ。わたしは同じ生徒会に入ってからも半年かかったもん」
「長くないですか?」
「だって何回か話しかけても『なにこの人?』みたいな目で見られてたから……嫌われてるんだって先輩に相談してたんだよ」
「……本当にお二人は中等部からの同級生ですか?」
「ごめんなさい……」
「沙月が謝るレベルなんだ」
「で、でもそこからどうやって仲良くなったんですか?」
「テストの成績で樽見さんと勝負してからかな?」
「そうだったわね……」
「漫画みたいなことしてる」
「そのときに全教科で樽見さんに勝って、普通に喋るようになったんだ」
「そして容赦がない」
「えぐいですね……というか嫌な顔されてたのにそこからよく仲良くなりましたね」
「……嫌っていたわけではないのよ。きっかけがなかっただけで。まさか勝負を仕掛けられて、その上全敗させられるとは思っていなかったけれど……」
「勝つなら全力で。ゲームも勉強もおんなじ」
結季ちゃんが胸の前で小さくピースして笑っている。
「半分冗談みたいな先輩の入れ知恵だったんだけど、仲良くなれたなら結果オーライ」
そう言って結季ちゃんが沙月に微笑むと、つられたように苦笑している。
随分とバーサーカーな思考な気もするけど、この前のライバル関係的な一面といい、これも二人なりの友情の築き方なのだろう。
良い関係……なのかな?
迷い人の灯 ぜろたか @takachang
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