お暇つぶし「虫よけ」
「──って感じかな。先生たちへの連絡も終わってるんだよね?」
「えぇ。すでに先生方には朝礼のHRで昼休みにお邪魔する旨を伝えてもらうように依頼したわ」
「今更だけど、昼休みって学食行ったりで結構みんないなくない?」
「もちろん教室にいない人もいるからさっきのチラシを朝配って認知してもらうの。お昼休みは生徒会役員の顔見せの意味合いもあるみたい」
「プリントを先生方に渡すようなオフィシャルな動きができるのは生徒会の特権ってところかしらね」
「みんな色々考えてるんだねえ」
「貴方が考えなさすぎるのよ。もっと脳みそ働かせなさい」
「俺の脳みそ、働いたら負けだと思ってるって」
「もうその思考がすでに負けよ」
「まだ本気出してないだけでマジになればコップの水浮かすくらい余裕だって」
「超能力に目覚める前に早く目を覚ましなさい」
「いいね沙月。欲しいところに欲しいツッコミ」
「どうも」
「そこでお礼もどうなの……毒されてない?」
「では、明日は先程のスケジュール通りに」
「あ、結季ちゃん。さっきの予定LINEに送っといて。忘れそう。というかもう忘れた」
「メモを取りなさいよ」
「鳥頭。送るのはいいけどね」
「というか生徒会のグループとかないの? そっちあるなら入れてよ」
「そういえば今年のはまだ作ってない。樽見さんどうする?」
「そうね。良い頃合いだし作ってもいいんじゃない」
「了解。じゃあ作るね」
「いがーい。沙月はこういうの苦手っぽい感じするのに」
「なによそれ」
「えー。なんか『ら、らいん? すたんぷ?』みたいなキャラじゃない?」
「ぶふっ……ちょっとわかるけど」
「水鳥さん?」
「ねー。なんか携帯の説明書全部読み込んでそう」
「テレビの録画できなかったり」
「イメージで馬鹿にされている……同世代の子たちに比べたら確かに明るくないかもしれないけれど、そこまでじゃないわよ」
「お嬢様なのに?」
「世のお嬢様だって今どきスマホくらい使えるでしょ。というかお嬢様ではないわ」
「ではお嬢。LINE交換しよ」
「そのお嬢、意味変わってないかしら。はい」
「はいピッっと。……アイコン地味だねえ」
「なんでもいいでしょ。貴方のは……隣の女の子はどなた?」
「妹。入学式のときに勝手にアイコン変えられたんだよね。わざわざ戻すのもめんどいからそのまま」
「……そこはかとなく虫よけのにおいがするわね」
「うん。虫よけだね」
「虫? まだ季節じゃなくない?」
「こちらの虫は年中よ」
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