34.本番3分前

 そんなこんなで、翌日のお昼休み。


 準備に手間取って、一年生の教室まで着くのに遅れてしまった。


 重い体をゆらして目的地へ。


 階段を登り切って、長い廊下へ出るとすぐに黒と山吹色の髪の目を引く女子たちを見つける。


 生徒会の女子陣は流石というべきか、すっかり準備万端の様子で最初のクラスの前に立っていた。


 その姿だけでも一年生たちから羨望の眼差しを得向けられているし、それだけで今日の意味はありそうだ。


 そういえば遅れてるんだった。早く二人の傍へ行こう。


「まったく……やっぱり来ないじゃない」


「でも今日は学校来てるの見たよ。メッセージ送ったら既読もついたしもう少し待とっか」


「そうね……時間通りに来ないことを見越したスケジュールを立てておいてよかったわ」


「やっほー」


「あ、来た──」


「遅刻、よ……?」


 振り返る二人が言葉に詰まる。


 遅刻に対する絶句だろうか。まだ三分くらいだけど、まあ遅刻は遅刻なのできちんと謝罪は必要か。


「ごめんごめん。これでも授業終わってから頑張ったんだけどねー」


「「…………」」


「まずはA組からだっけ? 俺も教室の隅で立ってるから頑張って」


 俺の言葉を深く深く飲み込むように、沙月は腕組みをして、目を閉じて、宙を見上げて、長い長い息を吐いて、教室へと静かに向かった。


 珍しく心を落ち着ける動作に見えた。やっぱり沙月でも大勢の前で喋るのは緊張するのかな。


 結季ちゃんは俺と沙月を交互に見て「これスルーするの!?」と言いながらも、教室へ遅れて入っていった。


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